Devil's Own

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「ブラック・ダリア」に見るヒッチコック

本屋うろついてるとこんなの発見。

官能小説用語表現辞典 (ちくま文庫)

官能小説用語表現辞典 (ちくま文庫)

素晴らしい。こういうのは日本以外には真似できないのではないか。
男性器及び女性器に関する豊富なメタファーから、セックスや性的絶頂を表現する際のレトリックに至るまで、実際の官能小説から引用した例文付きで約2300語の官能小説的な表現をラインナップ。これ読んだら、日常生活のあらゆるキャッチコピーやフレーズが性的なヴァイブスを伴って響いてくる。日本人の性に関する言語創造能力の可能性には舌を巻くしかない。これ欲しいなぁ。

さてさて、
全く関係ないのだが、ブライアン・デ・パルマの最新作「ブラック・ダリア」についてのレヴューをお友達に頼まれた、というお話。

作品中のカメラワークを一連のヒッチコック作品と関連付けて論じよという趣旨のレポート課題らしいのだが、大変だね。難しい。
僕もヒッチコック作品を全て見ているわけではないのでわかりやすいレヴューを提示する自信がないが、というか殆ど参考にすらならないかもしれないが、演出面や技術面でのいくつか気が付いたヒッチコックの影響を可能な限りレジュメしてみたいと思う。
デ・パルマヒッチコックを敬愛してやまないというのは結構有名な話で、デビュー当初からワンカット撮影やクレーンを用いた俯瞰のアングルなどを多用し、ヒッチコック的なカメラワークを素直に踏襲してはいる。この撮影技法が、未だ賛否両論で玄人好みのカメラワークにニヤリとする人もいれば、ヒッチコックの傑作群に比すれば全くなってないと一刀両断するファンもいる。
何はともあれ、ヒッチコックは未だサスペンスの巨匠であるわけで。そのカメラワークを引用するというのは、疑いようもなくオリジナルとの比較という運命を背負っているものであるから、その辺はデ・パルマ本人もある程度心得てはいるのかもしれない。が、それでもヒッチコック二番煎じという世間の批評はデ・パルマにとっては足枷でもあったかもしれない。
ブラック・ダリア」は、暗黒小説の第1人者ジェイムズ・エルロイの金字塔的傑作だ。暴力と欲望の渦巻くLA暗黒街を舞台とし、対照的な性格を持つ二人の敏腕刑事を主役としたこのサスペンスをデ・パルマが撮る。この時点で、デ・パルマ自身「ヒッチコックの二番煎じ」であることに相当意識的だったのではないかという気がする。
そして公開された「ブラック・ダリア」は大方の予想を裏切ることなく、ヒッチコックマナーを踏襲したものとなった。

冒頭の乱闘シーンから、思いっきり長回しワンカットのクレーン撮影で行われていることが象徴するように、劇中はとにかくヒッチコックテイスト。肝心のブラックダリアの死体発見シーンまで随分と待たされ、主人公バッキーと相棒のリー、その恋人ケイの三角関係というどーでもいい茶番を見せられるのだが、死体発見シーンはやはり俯瞰アングルで撮られているし、その死体にカラスが群がるというカットも否が応にも「鳥」を彷彿させる。

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そして劇中でのヒッチコックへの傾倒ぶりが最も顕著に現れるのが、リーが殺害されるシークエンスだろう。螺旋階段を駆け上るも間に合わず、目の前でリーが転落するのを目撃するバッキー。これは疑いようもなく傑作「めまい」からの引用だ。
めまい [DVD]

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ロープを持って背後から迫る人影やナイフを持って迫る第3者の影。この辺の演出も明らかにヒッチコック。ただどの作品かが思い出せない。。
殺人者の影だけが迫るという演出は「サイコ」なのだが、もっと直接的な元ネタがあったような気もする。それからリーが殺された直後、バッキーが頭を殴られ昏倒するシーンは、「知りすぎていた男」、マデリンの豪邸での気まずい晩餐は「断崖」が元ネタだろうか。
その他細かいところは、恐らくもっと沢山あるのだと思うがやはり「めまい」の影響が最も色濃いという印象がある。
殺された女性ブラックダリアに夢中になるリーや、ブラックダリアそっくりの女性マデリンとの情事にのめり込むバッキーの姿は、そのまま「めまい」の主人公が孕む狂気へと当てはめることができる。なにしろブラックダリアそっくりな富豪の娘の名前は、「めまい」のヒロインと同じ「マデリン」という名前なのだから、デ・パルマのアティチュードは明確だ。

以上僕が、気づいたところでの「ブラック・ダリア」におけるヒッチコックの影響はこんなものだろうか。なんだか散漫になってしまったが。もしDVDとか出たら、またゆっくり元ネタ探しでもしてみようかなと思う。

うん、あんまり参考にならなかったらごめんなさい。いいレポートが書けますように。。


全然関係ないけど今月でDVD「ウルトラマンレオ」が全13巻店頭に並ぶ。11巻以降の「円盤生物編」はどれも買いだなぁ・・。あーiPod買えなくなるなぁ。
http://www.dus.jp/digital_ultra_series/leo/sakuhin03.html