Devil's Own

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髭メジャーファーストアルバムへの第一印象

メモ書きはこの辺にしといて、今日のトピックス。

Peanuts Forever

Peanuts Forever

すっかり忘れていた髭のメジャーファーストアルバムをようやく購入。金ない。
ファーストシングル、「ロックンロールと五人の囚人」では、激キャッチーなヴァースに「ロックンロールは死刑」という刺激的な歌詞を載せてシーンに名刺を突っ込んだ髭である。「Thank you,Beatles」「I Love Rock'n'Roll」という人を食ったタイトルに続くニューアルバムの名は「Peanuts Forever」。

まず最初に通して聴いたあとの正直な感想は「あれー??これ微妙かな」だった。

キャッチーなメロディーに須藤寿のシニカルなリリックとヴォーカルが乗る冒頭曲「Mr.アメリカ」から、へヴィーなリフと粘っこいベースラインが中毒性を生む「ネアンデルタール Punks Fuck Off」までの冒頭3曲の流れはめちゃくちゃわくわくするし、ライヴでも度々披露されていたラストトラック「Good Feelin'」なんかは明らかに「Tomorrow Never Knows」を雛形とした名曲だ。
ただその他の曲がいつもと違う。簡単に言えば、すごく遅い。それでいてポップ。
4曲目の「せってん」などは、ライヴでもやっていて結構いい曲だなと思ったが、どうしてこんなわかりやすいミックスにしたんだろうかとかなり戸惑った。アルバム中では最もストレートなメロディーとリリックを持った恐らく前作の「君のあふれる音」に相当するポジションの曲なのだが、「君のあふれる音」がエレクトロニカの要素を取り入れた実験色の強い秀作であったのに対し、「せってん」のアレンジは驚くほどシンプル。本当にあのひねくれ者の髭ちゃんかと耳を疑うほどだ。
同じようなトーンでスロウな曲が続く、こっちはどうリアクションしていいかわからないままアルバムは進んでいく。「ハートのキング」なんかは後半のノイジーな展開を除けばスピッツかと思うくらいだ。かと思えば、いきなりサイケデリックなピアノ旋律とコーラスをバックに須藤寿が独白的なポエトリーリーディングを行うブルーハーブみたいな曲も出てきて、こっちは戸惑うばかり。一体何をしたいんだ。

正直、2,3度聞き返した後はずっと「Good Feelin'」を聴いていた。この曲は素晴らしい。
だけれど、このアルバム自体は決して「リボルバー」ではないんだよなぁ。後半のヴァイヴスとしては、ヴェルヴェッツの「White Light/White Heat」に近いかもしれない。まぁもう少し髭の方がスウィートだが。

White Light White Heat

White Light White Heat

聞き込むうちに印象が変わる音楽もよくある。多分髭というバンドの本質はそういうところではないだろうか。まぁ「Good Feelin'」は破格なので置いておいても、多分後半の魅力にはまりだすと、即効性のある冒頭3曲が急激に色褪せてくるのではないかという気がする。そういうアンビヴァレンスな性格を内包するところが、また髭ちゃんらしい。
かなりリラクシンな性格のアルバムであることは間違いない。冒頭3曲の流れで聴くと相当肩透かしを食うが、僕は早くも「ヒサシ、カリメロ」というふざけたタイトルを持つ楽曲のキッチュな魅力はまりかけている。

というわけでこのアルバム、もう少し長い付き合いを必要とするよう。