Devil's Own

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君の望む狂気が過ぎ去った後も―髭ちゃん新作についての追記

どうでもいいんだが、僕の部屋の前でカーセックスするのはマジでやめて欲しい。
たまにあるけど今日は無性に腹が立った。
中学のとき、近所のカーセックスのメッカみたいな河原があって、よく友達と車を揺らして遊んだ。
そんな思春期だからこんなろくでもない人間に育ったんだろうね。
友達に「最近ウルトラマンネタ多い」と言われた。これでも差し控えてると思うよ。一昨日の記事は社会学ネタだと思っていますが、何か。

StudioVoice読んでいたら、ロンドンで開催されている「トワイライト」をテーマにしたエキシビションが紹介されていて、その中でオーストラリアの写真家ビル・ヘンソンも紹介されていた。

同じくエキシビションに出展している他のフォトグラファーの中でもやはり群を抜いて素晴らしいと感じた。「トワイライト」というテーマであるにも関わらず、明らかに暗闇を捉えることに長けている。光と闇は表裏一体の概念であるから、ゆえに暗闇の美しさがそのまま「トワイライト」の美しさへとシフトするのであるが、やはりここまで耽美的なアプローチをできるのは本当に溜息が出る。まぁ、これも一種のゴシックじゃないかと。
でもなんかこれは既に写真ではないのかもなーとも思ってみたり。

特に書くこともないので、昨日に引き続き髭のニューアルバムについて。

Peanuts Forever

Peanuts Forever

昨日は、「なんじゃこりゃ」みたいなレヴューをしていたのだけれど、聴いてるうちにすごく髭ちゃんなアルバムだなと秘かに納得してきた。
方向性の不可解さの最たる楽曲が、ドラッギーなトラックに須藤のポエトリーリーディングが乗るブリティッシュレゲエ風サイケデリックチューン、「壁に話しかける普通の朝、僕はただの男」。
この曲、最初は相当に戸惑いを覚えたが、聴いているうちにどうやらこの曲が、アルバムのハイライトであり本質ではないかという気がしてきた。ある意味で髭というバンドの楽曲を象徴する要素でもある中期ビートルズ直系のサイケでポップなメロディーが完全に消去され、須藤の声とリリックだけが前面に押されたことで、彼の世界観と声の記号性をより印象付けることに成功している。髭というバンドにとって須藤寿の声と詩世界の占める比重が相当なものだったと再認識させられるような曲だ。
酔っ払いの戯言のような調子ではあるが、言葉は非常に研ぎ澄まされていて、聴くものの心の闇へと突き刺さってくる。どこかミッシェルのラストアルバム「サブリナ・ヘヴン」に収録された「サンダーバード・ヒルズ」を彷彿とさせるようなところがあり、恐らくライヴでは更にディープなジャムセッションになることが予測される。
SABRINA HEAVEN

SABRINA HEAVEN

「サブリナ・ヘヴン」はよくドアーズのラスト・アルバムになぞらえられるが、髭も前回のシングルで「ハートに火をつけて」をカバーしていたしなるほどこんなところでも繋がるね。
L.A.ウーマン [HDCD]

L.A.ウーマン [HDCD]

グリコのネオンよろしく 退屈すぎた一日に別れを告げる
そろそろ答えが欲しいんだ
子供騙しの嘘なら もう要らない
とっておきの僕の秘密と交換しよう
人生の怒りをあらわにして 汗を流すなんて
最低の仕事
悩むって悪いことばかりじゃないさ
キミの望む狂気が過ぎ去った後も
この手に感触だけは残っている
『壁に話しかける普通の朝、僕はただの男』

バンドの最初期からある「せってん」は、ポップでわかりやすいプロダクションを除けば、メロディー、リリックともに衒いのないストレートな表現で貫かれた名曲だ。ジム・モリソンというニヒリズムの高みを目指す須藤寿の感傷的な側面をリプレゼントする楽曲といえるかもしれない。

たのしいよりつらいよる
よるはぬけだせないくらいもり
どくははきだせないくらいもる
あとはかみだのみ かみだのみ だけさ
『せってん』

素直な言葉たちの中に時折顔を見せるシニカルな言葉がまたキュート。最初はかなり戸惑ったけど、やっぱりすごくいい曲なのかもこれ。もう少し素敵なコーラスワークとかがあれば、最初期ビートルズのカヴァー曲みたいにいい感じの曲になったかも。
まぁすごくいい曲だけどね。昨日と全く違うこと言ってるな僕。

同じくストレートなサウンド・プロダクションと須藤ののびのびとしたヴォーカルが、オアシスの「シャンペン・スーパーノーヴァ」を彷彿させる「ランチ」。歌詞はナンセンスの極みだが、所謂サビに当たるラインは日本語の面白さを巧妙に利用していて秀逸だ。

さまよう僕らはフューチャー
さまよう僕らのフューチャー
さまよう僕らがフューチャー
さまよう僕らはフューチャー
『ランチ』

「僕ら」と「フューチャー」繋ぐ助詞が「は」「の」「が」に変わるというだけで一つ一つニュアンスが変化して面白い。「さまよう僕らのフューチャー」だと少しネガティヴな印象になるが、これが「さまよう僕らがフューチャー」に変わると途端にビッグマウスだ。

今日一日聴いてみて、少しずつこのアルバムの持つ魅力に気がつき始めたが、それでもやはり「Thank you,Beatles」を超えるアルバムではないなーとは思う。

Thank you, Beatles

Thank you, Beatles

このアルバムで撒き散らされたニヒリズムシニシズムは、退屈な日本語ロックにおいてはやはり異質だった。98年以降のバンドがそのストイックさゆえに次々と自己崩壊し、その代表格でもあるくるり椎名林檎が急速にショウビズ化していく中で現れた髭は、そのタイミングといいアティチュードといい、ニルヴァーナ後に現れたペイヴメントを思わせる完璧なアンチヒーローだった。

正直もう 正直もう 
右も左もあったもンか
天変地異もないんだもンな
いやになっちゃうンだよ
何度だって言うぜ 何万回も
このメッセージ聞こえるかい?
このメッセージ聞こえるかい?
このメッセージ聞こえるかい?
このメッセージ聞こえるかい?
『Acoustic』

本当にいやになっちゃうよ。どいつもこいつも色々勝手なことぬかしやがって。
このメッセージ聞こえるかい?
届くはずないね。
たった一人の人に愛してるも伝えられないのにね。
いいさいいさ、
雨が降れば上機嫌なのさリーダー。


そういや今日社会調査のアンケートで音楽に関する質問があって、2問目くらいから『どのジャンルの音楽が好きですか?二つ選んでください』という項目があり、マジでゲンナリ。全然音楽わかってないなー。
名曲の定義を答えてくださいという項目があったので、その他にマルをつけて
鳥肌
と書いてやった。