ヌーヴェル・ヴァーグ三昧(1)
渋谷シネマヴェーラの年末年始プログラム「ヌーヴェルヴァーグはもうすぐ50歳になる」に足しげく通っているのだが、とりあえず今のところ観たもの。
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今もカポが将校が密告者が 隣にいる
信じる人あるいは信じない人
廃墟の下に死んだ怪物を見つめる我々は
遠ざかる映像の前で希望が回復した振りをする。
―「夜と霧」より
アラン・レネの「夜と霧」は相当キツかった。歴史の授業で見た「映像の世紀」がフラッシュバックした。特に先述したラストのナレーションには戦慄だ。
僕の大学の臨時講師で、ヒューマニズムと深い博愛精神に根ざしたレクチャーを展開する素晴らしい教授がいて、僕は毎回そのスリリングな講義内容に心酔しているのだが、この映画を見終わった後で、その講義で題材として扱われたハンセン病問題を思い出した。
日本における「夜と霧」はハンセン病問題だろう。個々人の人権と尊厳を著しく冒し続けていた忌まわしき「らい予防法」が撲滅した今でも、ハンセン病元患者に対する根源的な差別意識は消えていないし、何よりもハンセン病問題の元凶でもある日本独特の閉鎖的システムの病理性に対する反省が全く行われていないのが現状である。「世間」にとっての「異物」を拒絶し排除しようというメンタリティーが確実に巣食っているし、そのような排他のメカニズムが「世間」という日本社会固有のコミュニティーの性質そのものだったりするから非常にタチが悪い。
「希望が回復した振りをする」というラインは僕らが生きている社会に今もって通じるアフォリズムだ。そう思うとなんだか本当に遣り切れない。
ロメールの「獅子座」とゴダールの「恋人のいる時間」「アルファヴィル」の2本はまぁ手堅くヌーヴェルヴァーグといった印象。どれもモノクロ。「獅子座」の主人公ピエールの不運ぶりに涙がこぼれそうになり、「恋人のいる時間」の主人公シャルロットのエロさに鼻血が止まらない。どちらも、やはりフィルムの長回しが目立った。
「アルファヴィル」は2度目の視聴だが、やはりこれが一番好きだったかもしれない。科学至上主義の現代社会を風刺しつつも、アメコミやSF映画に対するゴダール流のパロディーがそこかしこに散りばめられているので単純にエンターテイメントとして楽しめる
特にプールサイドの死刑の場面と、物語終盤でロジックの権化である電子頭脳α60との対峙のシークエンスが素晴らしすぎる。
「恋人のいる時間」では、「愛する」という行為に含まれる、男性への自己犠牲と奉仕を強要する封建的「女性性」への疑問を指摘しつつも、主人公の倦怠感やマタニティーブルーの感情を余韻として残す形で極めて曖昧な終わり方をしていたが、「アルファヴィル」は「愛する」という行為と感情の重要性が一貫して主張されているのも興味深い。主人公が「快楽は結果でしかない」とヒロインに説明するシーンが象徴的だ。
この作品を見て僕が思い出すのは先日鬼籍に入られた実相寺昭雄監督作品であるウルトラセブンの第43話「第四惑星の悪夢」。
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後半2部はプライベート設定で見ることができないようなんで、ツタヤへ急げ!
「ベトナム」は後半のアメリカの反戦デモ内での市民の論争が延々と流されるのが不思議なトリップ感を生んだ。「数分後この映画が終わればあなたはあなたの平和な生活に戻り、遠い国の戦争のことなんて忘れてしまう」という辛辣すぎるメッセージがラストに敷かれている。