Devil's Own

cinema, music, book, trash and so on...

0513

 最近出たブレッソンのDVDボックスを見る機会に恵まれた。「ジャンヌダルク裁判」、「たぶん悪魔が」、「湖のランスロ」の三作が収録されている。「ジャンヌダルク裁判」は前に学校施設で見たことがあった。他の二つは未見だったのだけれど、どちらも鳥肌級の傑作だった。
 「たぶん悪魔が」は恋愛、慈善運動や宗教、精神分析などこの世に渦巻くあらゆる「綺麗事」「机上の空論」がシニシズムに敗北する様を描いたもの。主人公シャルルの友人ミシェルが環境問題について講義する場面で撲殺されるアザラシや海域汚染、それに伴う公害*1などの鮮烈な映像のコラージュや伐採される樹木をリズミカルに編集した映像などがいずれも本当に淡々と描いているが視覚的で印象に残る。
 「湖のランスロ」は本当の意味で音楽的な映画だった。所謂「一曲」を最小単位とする音楽はこの映画では一曲も使用されていない。にもかかわらずこの映画は音楽に満ち溢れていて、甲冑の擦れる金属音や馬のひずめの音、それから騎士たちの生傷から迸る血飛沫の音、どれも緻密に設計されていて、しっかりとした音響システムを持つ劇場で見たらさぞかし素晴らしいだろうなと感じた。冒頭における騎士同士の戦闘場面では、盛大な首チョンパを見ることができるが、下半身を中心に捉えた極めて視界の悪いショットと、登場人物の全てが纏っている甲冑の没個性によって「殺戮」という事象が不気味なくらい味気なく演出されている。この冒頭だけでも最高で、毎日見ている。
 最近ホワイトアルバムばかり聴いとるわ。