0731またはBlack Kids評への導入
家でトビー・フーパーを見て外でダグラス・サーク見る、そんな夏休み。今日は先生の取り計らいでサークのDVDボックスやユリイカのルノワール特集で執筆なさっており、このブログにも何度かコメントを下さっている大久保清朗さん(id:SomeCameRunning)とお会いすることができ、いい夜が過ごせた。とてもいい方で、僕は家族と仲の良い人は全面的に信頼する人間なので本当にいい人だと思った。今日は本当にありがとうございました。「アパッチの怒り」「いつも明日がある」「思ひ出の曲」と、今日で3本見たことになる。感想などは書くかもしれないし書かないかもしれない。明日はバイトだけど、なんとか「風と共に散る」見に行きたい。ソフト化されているものは外しているのだけど、やっぱり見れるときに見たいし。
ところでここ最近のインディーバンドブームがつまらんつまらんと文句ばかり言っているが、今年でオールタイムベスト級の傑作が実は3枚もリリースされていて密やかに興奮している。
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中でも抜きん出た仕上がりなのはBlack Kidsのファーストアルバムであり、80sディスコを意識したサウンドはもちろんだが「成熟した瑞々しさ」とも言うべき驚異のメロディーセンスがマイケル・ジャクソンやプリンスのファーストアルバムを髣髴させる。プロデューサーはバーナード・バトラー。今年はDuffyやケイジャンでの仕事も記憶に新しく、今日のポップミュージックシーンはバトラーが引っ張っているとさえ言えるかもしれない。日本にもこんなプロデューサーがいればいいのだが。サウンドは80sライクながらも、リリックやボーカリゼーションなどにおけるキュアーやウィーザーからの影響も多くのメディアに指摘されるところだ。実際、メンバーもフェイバリットアルバムにウィーザーの「ブルー・アルバム」を挙げているのだそう。それらのファクターを丁寧に辿るうちに共通項として浮かびあがって来るは、感傷的で情けない「ラヴソング」を書き続けるアティチュードかもしれない。とにかくこのアルバムにはひ弱で不器用で醜悪で自意識過剰で、それでいて胸が張り裂けるくらい切ないラヴソングが詰め込まれている。恋愛とはエゴイズムの衝突であり、究極的には人と人は永遠に分かり合うことができない。100パーセントの相互理解など実現不可能な絵空事なのである。それでも僕らは限りなく99パーセントに感動の分かち合いを目指してもがき続けなくてはいかないのだ。誰かを愛するということは、自分が孤独でひとりぼっちの存在であることを自覚するという、打ちひしがれるような痛みを伴う。ここ最近の日本では「ずっとそばにいるよ」といった無責任なメッセージだけを垂れ流し、聴いてるだけで脳みそが蕩けてしまいそうな馴れ合い自己肯定ソングが溢れているが、Black Kidsが歌うラヴソングはそうした生ぬるい連帯感を一切廃している。甘いメロディーに乗せて「君の母親にも父親にも犬にも兄弟にも甥にも姪にも会うつもりないからね」と冷たく突き放す"Hit the Heartbereak"をオープニングへ持ってくるあたり、連帯感や自己肯定ばかりを求めるいやらしい恋愛へのきっぱりとした拒絶が現れているようだ。このあたりは昨今の日本に蔓延している「ラヴソング(今となってはそう呼ぶのも気が引けるが)」の酷さも含めていつか書きたいと思っているが、果たしてやれるかどうか・・。どちらにせよ、レズビアン少女の百合動く・・・じゃない揺れ動く恋心を歌った"I'm Not Gonna Teach Your Boyfriend How To Dance With You"は世紀の名曲だが、十中八九今年のスヌーザーのベストシングルに輝くだろうから、あまり褒めないでおこう。
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