Devil's Own

cinema, music, book, trash and so on...

シカダ・ライフ

 今年も蝉が盛大に鳴いて、盛大に死んでいく。今日も熱いアスファルトの上に転がった蝉の死骸を3つ見た。蝉は幼虫として7年間土の中で暮らして、成虫になって地上に出て、子孫を残すため声の限り鳴きつくして一週間ほどで死んでいく、というのが実しやかにささやかれる定説だが、実際のところ成虫になってから一ヶ月くらいは生きているのだそうだ。とはいえ短いことには変わりない。山の中での閉鎖的な寮生活を強いられていた僕の中高時代に、浪人一年を足した7年間が土の中だったとすれば、さしずめ地上に出た成虫期間が大学生活ということか。それがたった一ヶ月だとすると、僕だってあんなふうに必死で啼くかも知らん。飲みサーに入って、合コンに行きまくり、「どうせ一ヶ月じゃん。寝ようぜ!」とか言ってセミギャルをとっかえひっかえだ。はてなでブログなど書くわけがない。しかし2週間目くらいに、そうした刹那的な生き方に嫌気が差してしまうだろう。世の中にすっかり失望し、ニヒルゼミになっていた僕は運命的な出会いをする。土の中にいた頃によく一緒に遊んでいた幼馴ゼミが立派な成虫になっていたのだ。土の中ではあんなにダサかったのに。僕は、彼女のひたむきで誠実な羽音に心惹かれるようになり、やがて自分の荒んだ生活を悔い改める。しかし、彼女は余命一週間しかなかった。彼女は僕より少し早く地上に出ていたのだ。僕は彼女に世界の中心(富士山とか)を見せるために一緒に長距離飛行の旅に出るが、彼女は旅の途中で力尽きてしまう*1。彼女は残り少ない余力で、卵を産み落とし安らかに眠る。その卵が僕の子供であることを告げて。僕は、これから生まれる子どもたちの人生に思いを馳せながら、太陽に向かって飛び立っていくのだ。また夏が終わる。
 そういうケータイ小説を書いて一攫千金を得たいものだ。なんだかmixiの日記のようになってしまった。夏といえばとあるご老体バンドが先日活動休止を宣言した。自らの才能枯渇を自覚した英断だなと感心したものだが、その後も最後の掻揚げどきとばかり「精力的に」活動している姿は見苦しいことこの上ない。蝉のように潔くなってほしいものだ。どうせ10年もすれば再結成ライヴなんてドラマチックにやるに決まっている。じーじーじー。

*1:たすけてくださーい