Devil's Own

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ハネジローの登場が一番サプライズだった−『大決戦!超ウルトラ8兄弟』

  • 全然関係ない話から始めるが、時代劇専門チャンネルで絶賛放映中の『次郎長三国志』シリーズが途方もなく面白くて毎回楽しみで仕方がないのだけど、その放映後、津川雅彦もといマキノ雅彦が『次郎長三国志』について語るミニコーナーみたいなものが設けられているのね。自分が新たにリメイクした映画『次郎長三国志』の宣伝も勿論兼ねつつマキノ雅弘の思い出やその映画たちの魅力について語るっていう番組。というかこのリメイク企画のお陰でオリジナルシリーズの放映もされたのだろうが、何というか予告編や本編の抜粋映像などの映像を見る限りリメイク版は何ともこう・・明らかに残念な感じなわけである。津川雅彦が今回の映画のキャスティングや演出の気苦労について楽しそうに、そして誇らしげに語るものだから、ますますしょっぱい気持ちがこみ上げてくる。でもまぁ本人は楽しんでるわけだし、もうそっとしておきたいというか、どちらにせよ居た堪れない気持ちになってしまうわけよ。津川雅彦の健康的なファミリー感というかサークルノリというかさ、自分の気に入った役者というより仲の良い友達集めて楽しくわいわいやってる映画をあーだこーだ言っても仕方ないし、「試写でおすぎが泣いて褒めてくれた」って話を聞かされても一ミリも見る気が起きないというか。
  • で、なぜそんな話を始めたかと言えば、『大決戦!超ウルトラ8兄弟』もまさしく同じような居た堪れなさがあったわけ。ちびっ子達どころか僕のようなコアなウルトラファンですら気恥ずかしくなってしまうような内輪ムードが全編見事に貫かれていて、明らかにサービス過多。でもこう、何にもいえないわけよ、ファンを喜ばそうとみんな頑張った結果なわけだしさ。
  • パラレルワールドという設定がやはりご都合主義の域を出てない。「パラレルワールドだからって何でもアリじゃない」って長野君がどこぞやのインタビューで言っていたのは感心したがやはり何でもアリ感になっていたよ。いいじゃんそんな難しい世界観なんて見てるやつが勝手に補完するんだから、乱暴に全員共存させときゃよかったんじゃん?パラレルワールド=多次元宇宙論としてテレビシリーズでは天才科学者だった高山我夢に説明させるという描写はちょっとよかった。
  • 僕なりに考えてみたけれど、やはり昭和ウルトラの4兄弟はいらなかったかもしれない。や、確かに郷秀樹(団時朗)とアキ(榊原るみ)が幸福な家庭を築いている上にその部屋に坂田健(岸田森)の写真が飾ってあるところとかはグッと来てしまったんだけどね。*1ただ、昭和ウルトラシリーズは『ウルトラマンメビウス』のテレビシリーズと劇場版でひとまず区切りをつけておいて、今回登場するウルトラマンは平成三部作とメビウスのみに絞るべきだったのかもなと個人的には思う。
  • 昭和ウルトラシリーズ全8作と世界観を共有しながらも、『ウルトラマンメビウス』は紛れもなく平成ウルトラ作品だった。ウルトラマンのヴァージョンアップは勿論だが、極め付きは最終回のエピソード、クルーGUYSのメンバー全員がメビウスとなって敵を粉砕するという描写だ。選ばれた特別な人間では決してない。誰もがウルトラマンになる可能性を持っている、というかなる、というテーマこそが平成ウルトラシリーズで一貫して受け継がれてきた独自性だったのだ。*2だから、メビウスが平成ウルトラマン3人とが共演すること自体は特に違和感ないというか、むしろしっくりきてしまうんだよね。
  • パラレルワールドゆえに、劇中でダイゴ(長野博)、アスカ(つるの剛志)、我夢(吉岡毅志)の三人は当然僕らが知ってる三人じゃないわけよ。これがなんとも寂しい。とてつもなく寂しい。これはダンディ4にも言えることなんだけど、でもあの4人は『メビウス』で正真正銘の本人を演じてるわけよ。だからあの三人に10年ぶりに会えたのにまったく覚えていないなんてっていうのは何かやっぱりリアルタイムで見ていた人間にすれば寂しいよ。
  • ま、でもダイゴはダイゴ、アスカはアスカ、我夢は我夢だったなぁ。ヘンなのはダイゴが怪獣オタなところくらいか。
  • 肝心の特撮部分だが、ゲスラの登場場面で精巧に再現された赤レンガ倉庫周辺のミニチュアワークには感心した。ゲスラなんて地味な怪獣だが、余計なデフォルメも施さず原型をとどめていたのにも好感が持てる。
  • 続くパンドンはオリジナルとはかなりかけ離れたフォルムだが、実は本来の原画により忠実な造形がなされている。でもゲスラに続いてなぜパンドンなのかは謎。そういうちょっとズレたセンスがまぁヒッポリト星人らしいっちゃらしい。自分のことスーパーヒッポリト星人とか言っちゃったり、キングゲスラとかキングパンドンとかいうネーミングセンスも含めて。
  • 終盤の先頭シーンほぼすべてがCG処理。なんか最近のウルトラシリーズはCGによるデジタル処理がアナログより優位に立っていると勘違いしていないか?別にCGがよくないというのではなく、使い方間違ってない?ってことなのよ。アナログでは出来そうもない映像や運動を「再現」するのがデジタルの役目だと思うんだが。
  • だが、もう文句は言うまい。それからウルトラファンの要求に応える一方、これは横浜開港150周年を記念して作られたわけで、ゆえにこれは横浜の観光映画でなくてはならなかったわけね。だから、この映画に登場するウルトラマンたちは地球の平和よりも何よりもまず横浜の地域振興を優先するローカルヒーローなのだ。僕らのウルトラマンは矮小化されたかもしれない。でも、まぁ観光映画を隠れ蓑にこれだけすき放題のパーティーを見れたんだからいいとしよう。

*1:「次郎君はどうなったんだ!!」は言いっこなしだ

*2:ウルトラマンマックス』は例外かもしれない。