Devil's Own

cinema, music, book, trash and so on...

『落下の王国』

  • とりあえず僕はあまり「映像美」というものに惹かれないのかも。ダリ、ハースト、エッシャーあたりの現代美術を彷彿させる画つくりにはインパクトはあるものの、シーンが有機的につながっていく映画的快楽が少ない。
  • スパイク・ジョーンズがクレジットされていたのにはちょっと納得した。こう映画というより質のいいビデオクリップを見ているような気持ちになったな。壁掛けテレビでBGV推奨だ!
  • とはいえオープニングでベートーヴェン交響曲第7番がかかったときは、無条件で傑作だと思ったりもして。しかも第2楽章を使用するなんていい度胸じゃないか。『ストーカー』(タルコフスキー)、『黒猫』(ウルマー)そして何より『『ローラ』(ドゥミ)だ。『ローラ』のせいでこの曲を聴くと涙腺が崩壊する。
  • 現実世界で看護婦、御伽噺世界でお姫様を演じていたジャスティン・ワデルが美しい。特に看護婦の衣装がエロくていい。ドライヤーの映画から出てきたみたいな禁欲的な淫らさがある。ああいうタイプの美女は最近見ないのでこれは収穫。
  • 御伽噺世界のほかにも、「こどもが見る世界」という視点が何箇所か見られて印象深かった。そうそう病院ってヘンな人たくさんいてなんか怖かったよな。
  • 終盤、サイレント映画のコラージュ*1を見て、「あ、ロイはハロルド・ロイドなの」と思ったらどうもそういうわけではないらしい。子どもの視点から見るとロイドもキートンもおんなじように見えるってことなのね。そのへんの意図は公式サイトのプロダクションノートに詳しい。
  • 個人的な好みとしてはプロデュース側の意向通りファンタジー編に重点を置くべきだったんじゃないかと思う。そうすると理想的な子ども映画になったと思うのだが。へたれスタントマンが少女との友情で立ち直るみたいな安易なヒューマンドラマに回収されてしまった感がなきにしもあらず。この映画のDVDはツタヤではファンタジーの棚だろうか、ヒューマンの棚だろうか。それにしてもやっぱヒューマンって思い切ったジャンルだよな。

*1:駄目押しでまた第7番がかかる。