Devil's Own

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『ウルフマン』


 ゴシックな衣装と舞台立て、手抜きのない人体破壊、フリークスへ変貌していく男の苦悩、ロマネスクな世界を盛り上げるダニー・エルフマンの音楽などなど、私たちがティム・バートンの映画に求める要素の大半は、『アリス・イン・ワンダーランド』ではなくなぜか『ウルフマン』にあったのだった。ウルフマンが他のモンスターやフリークスと一線を画す最大の要素として、肉体が変容する恐怖があるが、この映画でも、満月の夜にベニチオ・デル・トロが狼男の姿へと変貌していく様子が最新CGと従来の特殊メイク技術を駆使して丁寧に描かれている。『狼男アメリカン』での変身シーンは、いまだにこの分野の最高峰だとはおもうが、この名場面を手がけたリック・ベイカーの仕事を「狼男」という題材で改めて見ることができるのは単純にうれしい。監督のジョー・ジョンストンは質の高いジャンル映画をコンスタントに撮り続けているが、今回もオリジナルのムードを最大限に活かしながら、視覚効果やドラマ面においてより現代的なアップデートを施しており、リメイク作品として理想の仕事をしてくれたとおもう。アンソニー・ホプキンスエミリー・ブラントも本当によかった。