Devil's Own

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奈良行ってきたよ

 仕事をやめて暇ができたのでちょっと奈良に行ってきました。実は、奈良には小学生のころに父親に連れてきてもらったことがあり、これは少年時代の想い出の中でもとりわけ美しいものとして記憶されている。基本的に私も父親も出不精だったため、幼少のときに遊園地やリゾート地などに連れて行ってもらったり、そう願ったこともほとんどない。休日に足を運ぶのは図書館と決まっていたのである。そんな父親がどうして遠い奈良まで家族を連れて行く気になったのか、今では記憶があいまいだが、ある日百科事典(何かにつけて百科事典を取り出し、しげしげと眺めるというのが父親の道楽だったのだ)で奈良の仏像を見せてもらったときに、私がたいへんな興味を示したことがきっかけだったとおもう。そんなわけで奈良は私にとってとても楽しい場所として記憶されており、機会があればまた行ってみたいものだと思っていたのだった。初めて奈良に行く彼女も一緒だったので、東大寺戒壇院、二月堂、三月堂など含む)、法隆寺中宮寺興福寺薬師寺奈良国立博物館と有名どころを押さえていく感じだったのだが時間をかけて見られたので個人的には満足している。まあしかし仏像を見るとテンションが上がってしまった。今、若い女性の間で仏像が流行っていることも知っているし、私の勤めていた会社の同期にも「趣味は仏像鑑賞です」と言う女の子が何人かいた。そういう人たちが仏像のどういう部分に惹かれているのかは知らないが、私の場合はフォルムやポージングのかっこよさが第一にあり、美術品というよりフィギュアか何かを見ている感覚に近いとおもう。今回わかったのだが、私の好きな仏像の系統として、細身のフォルムが特徴的な飛鳥時代に作られたものと、運慶快慶に代表される慶派と呼ばれる仏師たちが手がけた鎌倉時代以降に作られたものがあるようだ。前者のなかでは法隆寺百済観音像と中宮寺弥勒菩薩半跏思惟像が特に好きで、このお二方には小学生のときからどうしようもなく惹かれていた。今思えばそれも無理はない。アルカイックスマイルをたたえた面長のマスクと細身のフォルムが特徴の飛鳥の仏像群はウルトラマンのデザインモチーフになっているのだった。後者は金剛力士像を筆頭としてマッチョな体つきに今にも暴れ出しそうな躍動性溢れるポーズ設計などにもしびれるが、私はこうした「動」の要素だけでなく、写実を尽くした衣服の造形や繊細な表情など「静」の要素においても慶派の真骨頂が現れているとおもう。そういう意味で今回いちばん心奪われたのは栄快の手による地蔵菩薩立像だろうか。もともとは滋賀の長命寺を本拠とされているようだが奈良国立博物館で見ることができた。奈良国立博物館の仏像館と興福寺の国宝館はものすごく充実していて、あそこだけで一日過ごせるくらいのレベルでしたね。有名な阿修羅は八部衆という守護神集団の一員なのですが、八人が一堂に会しているのはやはりかっこよかった。勝手にキャラクター設定してしばらく楽しみました。あの八人を主役にした漫画を誰かに描いて欲しい。

地蔵菩薩立像/栄快 1254