Devil's Own

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『ミックマック』(ジャン=ピエール・ジュネ)

"Micmacs à tire-larigot"2009

 『アメリ』はあまりに表層的な見方ばかりされているのと、前作『ロング・エンゲージメント』がわりと微妙だったことも相まってしばらくジュネには距離を置いていたのだが、『ミックマック』は初期作にあった廃物フェチ、大道芸人フェチなどが復活していて楽しかった。それからジュネの映画には欠かすことのできない「ちょっとヘンな人たち」が、今まで以上に重要な働きを見せている。ジュネの映画ってどこか群像劇的な楽しさがあるんだよね。今回はある種の「ケイパーもの」なのだが、一見何の役にも立たない各人の特技が合わさって、奇想天外ないたずらを遂行していくさまはとても痛快だ。多分『インセプション』のチームより優秀だとおもう。随所に織り込まれた瀟洒なギャグも、本質的には暗い復讐譚を軽妙なものにしてくれている。『デリカテッセン』や『ロスト・チルドレン』でのアクの強いユーモアセンスは、やはりマルク・キャロに拠るところが大きかったのかなぁ。あとジャン=ピエール・ジュネはやっぱり女の趣味がいいとおもった。