『アリゲーター』(ルイス・ティーグ)
"Alligator"1980
『クジョー』が素晴らしかったので借りてきた。ちょっと調べてわかったのだが、監督のルイス・ティーグはもともとロジャー・コーマンの下で仕事をしていたのだそうだ。作品を見る限りそのスピリットをしっかり受け継いでいるとおもう。12年前トイレに捨てられた赤ちゃんワニが、薬物の被験動物の死骸を食べながら下水道で巨大化し、ついに人々を襲い始めるというシンプルなあらすじ。プロットやカメラワーク、編集、音楽の使い方などは意識的に『ジョーズ』を踏襲している。ルイス・ティーグは『ジョーズ』を繰り返し見て研究したが編集がうまくいかず、ついにはヴァーナ・フィールズ(『ジョーズ』の編集担当)に「うまく真似できないんだけど」という電話までかけたのだという。その甲斐あってというべきか、下水道でのアリゲーターはなかなか不気味に見える。暗い下水道の中、懐中電灯に照らされて一瞬浮かび上がるアリゲーターの姿―古典的だがこういう演出は好きだ。怪奇演出を不必要に引っ張ることなく、中盤以降は豪快なアクションに転じる胆力も好感度大。アリゲーターも本物や気ぐるみ、ロボットなどをを使い分け、迫力がある。かなり巨大なので後半はほとんど怪獣映画といってもいい。ガーデンパーティーでの惨劇は大パニックここに極まれりといったところで、ほとんどスラップスティックコメディののりである。メイドさんが食べられちゃうところが妙にえろかったですね。
よく出来ているが、あくまでも『ジョーズ』のエピゴーネンの域は出ていないとはおもう。ルイス・ティーグが『ジョーズ』的なパニック映画のクリシェを突き破ったのはやはり『クジョー』だろう。昨日書き忘れてしまったが『クジョー』には人とぎょっとするさせる趣向がたくさん凝らされており、その多くが『ジョーズ』以降定着したクリシェを逆手に取っていることがわかる。『ジョーズ』のバッタモンとして片付けられてしまうような映画の中にあって地道にその手法を鍛錬させていたルイス・ティーグの職人魂に感動した。
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