Devil's Own

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続編映画ベスト10

 毎年末のお楽しみ。今年のお題は続編映画ベストということで。ではさっそく。
http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20101101

1.『ダーティハリー2』(テッド・ポスト)

2.『エクソシスト3』(ウィリアム・ピーター・ブラッディ)

3.『スパイダーマン2』(サム・ライミ

4.『バットマン・リターンズ』(ティム・バートン

5.『子連れ狼 三途の川の乳母車』(三隅研次

6.『大魔神逆襲』(森一生

7.『グレムリン2 新・種・誕・生』(ジョー・ダンテ

8.『エイリアン4』(ジャン=ピエール・ジュネ

9.『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(本多猪四郎円谷英二

10.『M:i-III』(J・J・エイブラムス

 今回はすんなり過ぎるくらいすんなり決まりましたね。敢えて王道を外しましたというわけでもなく、本当にこの10本という感じで。次点などを書くときりがないのでやめておくが、変化球として『フック』は入れてもよかったかと思っている。
 堂々の1位は『ダーティハリー2』。1作目の監督であるシーゲルと並び、イーストウッドが師と仰ぐテッド・ポストの驚くべき動体視力と運動神経の高さには瞠目させられる。当時若手だったマイケル・チミノのシナリオ設計も見事で、より痛快な娯楽活劇へと舵を取りつつも、後のイーストウッド作品に連なる「死刑vs私刑」というテーマ性もしっかりと掘り下げている。これぞ理想の2作目。『ゴッドファーザーPART2』や『フレンチ・コネクション2』よりも先に作られていることを考えると、いかに本作が偉大かわかってもらえるとおもう。自らは主演へ回り、ベテランであるポストと若手であるチミノを配する本作の布陣は、イーストウッドを中心とした「継承」の構図にもなっており感動的だ。こういうところがイーストウッドのすごいとこなんだよね。単に作家性を突き詰めていくだけではなくて、映画史という大きな流れの中で自分に何ができるかを常に意識している。スタジオシステムが崩壊しても、映画史の蓄積と継承は絶やすまじ、というイーストウッドの覚悟が既にこのころからあったというところがね。
 『エクソシスト3』。かなりむかしVHSで見たきりだけどこれはもう本当に怖かった。当時はこうした続編映画を軽視するふしがあったので余計に意表を突かれる感じだったのを覚えている。ホラー映画ベストを作ってももしかしたら1位になってしまうかもしれない。本気で身の毛がよだつような怖さを覚えたホラー映画はこれと『悪魔のいけにえ』くらい。
 『スパイダーマン2』は割りと王道だとおもうし前年のゼロ年代ベストにも挙げたので詳しくは書かない。以上3本は単体で映画史に残る傑作だとおもう。
 『バットマン・リターンズ』。『ダークナイト』で極限まで突き詰められたモチーフが、ほとんど無視されているからといって本作が劣っているということにはならない。高バジェットの大作映画でここまで自己表現を突き詰めることができたティム・バートンはやはり怪物。あまりにバートン的な怪人ペンギンの悲哀。表現主義的な美しさに満ちたゴッサムシティの造形。その中をよちよちと歩くペンギンたちの群れ。子どものころテレビでこの映画を見たとき、好きなものはぜんぶ詰まっているとおもった。
 『子連れ狼 三途の川の乳母車』。時代劇は『宮本武蔵』(錦之助版)や『御用牙』の第2作などとも迷ったが、漫画と映画の究極の蜜月ともいえる本作を。三隅研次は漫画的なレトリックを呆れるほどそのまま、しかし巧みに映画へとトレースすることでこの途方もない傑作を産み落とすことが出来た。それは映画と漫画、双方における作り手の技術力と受け手のリテラシーが高水準で結実したからこそなしえた業であり、映画と漫画の批評空間に決定的なズレが生まれた今となってはほとんど不可能な仕事だともおもう。で、なぜか香港で隔世遺伝的に『少林サッカー』が生まれることになるのだが。
 『大魔神逆襲』。大魔神シリーズの3作目。3作とも好きだが、第2期ウルトラシリーズ至上主義の私としては、子どもが主役である本作を推す。このすばらしい3部作がたった半年の間に作られているという事実には驚嘆するほかなく、大映京都撮影所の円熟した輝きがここにはある。何より特筆すべきは3作目における雪の国宝級の美しさであり、映画芸術ここに極まれりといったところ。本物よりも美しいとすらいえるこの偽りの雪景色は、言うまでもなく撮影所システムの技術蓄積の賜物であり、今となっては再現不可能な文字通り「失われた風景」なのだ。少年の素朴な信仰と自己犠牲に大魔神が応えるクライマックスにふるえろ!
 『グレムリン2』。続編映画のオーソドックスな手法として、1作目のパニック表現を過剰に押し進めることでコメディにまで突き抜けてしまうというものがあるとおもう。『悪魔のいけにえ』などホラー作品にも多い手法だとおもうが、こうしたスラップスティック系ともいえる2作目で、私が好きなのは『グレムリン』の2作目。ギズモのランボーコスプレ(超かわいい)を筆頭にふんだんに盛り込まれたパロディ、ジョー・ダンテの自己言及性が更に推し進められている点にも注目したい。ある意味かなりヌーヴェルヴァーグ的なジョー・ダンテのあられもない映画愛に笑いながら泣いてしまう作品。『グレムリン2』は割りと過小評価されているとおもうんだけどね。
 『エイリアン4』。これをけなす人とかまじ信用できないし。ジュネの最高傑作でしょう。これまで比較的男くさい作品風土にあったシリーズに女性的な潤いをもたらした功績は大きい。ウィノナ・ライダーのかわいさは犯罪。
 『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』。今回のラインナップのなかで一番反則技っぽい作品といえるだろうか。果たして続編といってもいいものかなと。しかし『続・荒野の用心棒』がありなら全然セーフでしょうと個人的にはジャッジメント怪獣図鑑か何かで初めてこの映画のイメージを見たときの戦慄は忘れられない。即ビデオを借りてきて、ガイラが人を食う場面の戦慄もまた忘れられない。
 ラスト1本に滑り込んだのは、常に地面ぎりぎりの男トム・クルーズのライフワーク最新作。最近久しぶりにシリーズを通して見たのだが、1作目はストイックな孤独主義者、2作目は軟派な熱血漢、3作目は面倒見のいい組織人とイーサン・ハントのキャラクターにまったく一貫性がないのには驚いた。いいのかこれでと。どうしようもなくヒッチコック臭が垂れ流されてしまう1作目も、たかが女の取り合いで東映的なバイクアクションを繰り広げてしまう中学生マインドな2作目も捨てがたいのだが、「よし俺も明日からスパイ目指す」となるのは3作目。スリリングなタイムリミットに加え、ひねりも効いた脚本もいいし、今回初めてケイパーものとしての面白さにフォーカスしたところがえらい。このメンバーでの続編が見たいと素直に思わせてくれた。J・J・エイブラムスという新しい才能の発見も功績のひとつであり、『ダーティハリー2』で始まるラインアップを締めくくるのには適当かと。こんな感じで、私の続編映画10本はこのとおり。よろしくお願いします。