Devil's Own

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さよなら2010(映画編)

 こんばんは。恒例のふりかえりエントリ映画編です。今年劇場で見た映画は1月1日に再見した『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』から12月27日『シングルマン』までのべ113本。再見したものやリバイバル上映を差し引くと新作映画は1月12日『(500)日のサマー』から12月27日『シングルマン』まで87本だった。結局例年と同じくらいでした。ではベスト10です。

2.『キック・アス』(マシュー・ヴォーン)

3.『ヒックとドラゴン』(クリス・サンダース、ディーン・デュボワ)

3.『プリンセスと魔法のキス』(ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ)

5.『(500)日のサマー』(マーク・ウェブ)

7.『仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』(坂本浩一

8.『アウトレイジ』(北野武

 以下『インビクタス』『ナイト&デイ』『第9地区』『トイ・ストーリー3』『アイアンマン2』『コララインとボタンの魔女』『ブロンド少女は過激に美しく』とつづく。私はつまらない映画は絶対に見たくない超慎重派なので、見た映画はだいたい面白かった。
 堂々の1位はジャン=リュック・ゴダールの新作。今年は年末近くまで『ヒックとドラゴン』と『プリンセスと魔法のキス』が同率1位で逃げ切るかと思いきや、12月に『キック・アス』がアメリカ映画の決定打として登場し、そこにフランスのおじいちゃんが現れて総べてをかっさらっていきましたとさ、という感じだろうか。シナリオ構成が優れていようが、映像に趣向が凝らされていようが、『ソシアリスム』のむきだしの美には到底太刀打ちできそうにない。正直、ランキングという「枠組み」の中にこの危険物をラインアップすることにも抵抗がなかったわけではない。1位かランクアウトか、大いに迷った。が、この眩暈と衝撃を2010年の記憶としてとどめておきたいと考え、選出することにした。予定調和を徹底拒絶するこの作品が万人受けするとはいわないが、たとえば第2幕「どこへ行く、ヨーロッパ」などはキュートな子役の活躍もあって意外にコミカルな一面もあったりする。私が劇場で観た時は何人かくすくすと笑っていた。お勉強ではなくて、気軽なイベント感覚で、是非カップルやなんかで見に行ってほしいとおもう。今年はゴダールイーストウッドのそれぞれの新作を見ることができたという意味ではなかなか贅沢な年だった。
 誰もが感じているようにアニメ映画が豊作だった。往年の怪奇映画が「人形」の肉体を得て息を吹き返した『コララインとボタンの魔女』、スリリングな脱獄アクションからコメディ、メロドラマへと目まぐるしく表情を変える『トイ・ストーリー3』と、ランク外の作品も多様なジャンルを横断しており、それぞれが高いクオリティを維持してた。もはや「アニメ映画」というカテゴリーは意味をなさなくなってきている。中でも3位に選出した2本の完成度は群を抜いていたのではないだろうか。ドラゴンが飛んでいるだけで、かえるが踊っているだけでどうして涙があふれてしまうのか。ウォルト・ディズニーとドリームワークス、相反するアニメスタジオの二大勢力が、それぞれ誠実な姿勢でジュヴナイルの王道を提示してみせた。これは意味があることだったし、とても感動的なトピックスだったとおもう。『キック・アス』〜『プリンセス』の3本は、物語の高い完成度もさることながら、「本当に勇気がある行為とはどういうことなのか」という問いかけにまっすぐな回答を示したアメリカ映画の新しいスタンダードでもある。
 今回がデビュー作となったマーク・ウェブ(『(500)日のサマー』)とドリュー・バリモア(『ローラーガールズ・ダイアリー』)についても言及しておきたい。2作とも限られたデビュー作だけが持ちうる瑞々しさと野心的なアイディアに満ち溢れた傑作だった。ぴっかぴかの新しさに目を奪われる一方、『サマー』の狂騒的なミュージカルシーン、『ローラーガールズ』での生身のアクションなどには伝統的なアメリカ映画の息吹さえも感じられる。新人気鋭の監督作にも、アメリカ映画のトラディショナルな遺伝子が、ごく自然な運動神経として継承されていることは素直にうらやましいおもった。
 それに引きかえ、今年もドメスティックな映画にはなかなか足が向かなかった。「日本映画」はとうの昔に死滅してしまっている。私が興味を持って見に行くものといえば北野武黒沢清のような固有の「作家」による仕事か、もしくはインディペンデント資本による自由奔放な作品かのどちらかだった気がする。「日本映画」の壊滅的な断絶を象徴する出来事が中島哲也『告白』のヒットだったのではないか。私自身はヒステリックに目くじらを立てるほど『告白』に怒りを覚えたわけではないが、そういう意味では、スタジオシステムの残滓をかき集め、技術の復興をこころみた『十三人の刺客』、そしてプログラムピクチャとして良質な完成度を見せてくれた『仮面ライダーW FOREVER』の2作は高く評価しておきたい。今回『仮面ライダーW』をランクインさせたのは、私個人の嗜好によるところも大きいが、日本映画を見てひさしぶりに「短すぎる」という感想を持ったからである。テレビシリーズのファンにとっては至上の作品だったとおもうが、映画単品としても熱い傑作なので馴染みのない人にも是非見てほしい。『宇宙ショーへようこそ』は、ここ数日大長編ドラえもんを集中的に見ていく中で急浮上してきた。あまり話題になっていなかったし欠点も多いが、力作だし、子供時代に毎年ドラえもん映画を見ていた世代ならかなり楽しめるとおもうのでラインアップした。
 旧作はジャック・ロジエオルエットの方へ』、ロバート・アルトマンバード★シット』、ダリオ・アルジェント『4匹の蝿』などが印象深かったです。今年はヨーロッパ圏の映画をあまり見れなかったのが少しさみしかった。
 twitterでフォローしてくれている方はご存じだとおもうが、今ドラえもんの映画を年代順に見ている。全30作品、今年中には見切れるはずなので、年明け最初の記事は「お正月だよ!大長編ドラえもん一気見」エントリになるとおもうのでお楽しみに。それではみなさんよいお年を!