Devil's Own

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『恋とニュースのつくり方』(ロジャー・ミッシェル)

"Morning Glory"2010/US

脚本アライン・ブロンシュ・マッケンナ(『プラダを着た悪魔』)、監督ロジャー・ミッシェル(『ノッティングヒルの恋人』)の最強タッグという惹句に対して、「それ最強やーん」とOLのように叫びながらまんまと見に行ったのだった。しかしこの映画の男性排他的な宣伝ぶりはなんなんでしょうね。『「私にはムリ」、って、思ってない?』というキャッチコピーが頑張る女子の味方って感じでこわいです。こういう映画が女の子だけに占有されているのは問題だとおもう。プログラムにも女子アナのインタビューとか載ってて居心地の悪さに煩悶としてしまったが、そんな疎外感を差し引いてもなお魅力的な映画なので男子も徒党を組んで見に行きましょう。製作にJ・J・エイブラムスが名を連ねているが、モンスターや宇宙船はもちろん登場しない。自分を律したのだとおもう。偉い。視聴率最低のモーニングショーを任された新米プロデューサー・ベッキーレイチェル・マクアダムス)が、曲者ぞろいのスタッフを束ねて奔走する。プロット自体はこれまでのマッケンナ作品とあまり変わりないが、ヒロインに過剰な才覚を与えることなく、より感情移入しやすいつくりになっている。構成上のウェルメイドさでは『プラダを着た悪魔』に一歩劣るが、弱小グループが信頼関係を結び、ひとつの目標にまい進していく王道のストーリーは魅力的だ。序盤で執拗に繰り返される壊れたドアノブのギャグもいい。没個性的な好青年とのロマンスが申し訳程度に描かれたりもするが、後半へ進むにつれて割とどうでもよくなってきて、ハリソン・フォード演じる堅物キャスターとの関係性へとフォーカスしていく。もうここまでくるとロマンス要素など入れない方がいい気がしてくるのだが。何なんでしょうこの「仕事と恋」に対する病的なこだわりは。マクアダムスとフォードの関係は基本的には師弟関係といえるが、どこか擬似親子的でもある。私はこうしたコメディ映画に対しては始めから85点くらいを期待して見ているし、たいていその期待は裏切られない。そのため、予想外のいびつさやはみ出しが発露したときにむしろ惹かれたりもする。この映画の場合、レイチェル・マクアダムスの躁病っぽいコメディエンヌぶりだろうか。過剰なテンパり演技がキュートでおかしいんだよね。『赤ちゃん教育』のキャサリン・ヘプバーンのような狂気と稚気の紙一重というか。恋に仕事に一所懸命な(冗談とかじゃなくてほんとに一所懸命なんだよ)レイチェル・マクアダムスをついつい応援してしまうのだった。私は何年にか一度は必ずやってるような「業界モノ」のテレビドラマが苦手で、それは作り手も登場人物も明らかに大衆をなめくさっているからなのだが、ああいうドラマを見てテレビ業界に憧れる人間がいたりするから謎は深まるばかりである。私も一人前に就職活動などしていたが、何のアイディアも独自性もなくプライドばかり無駄に高い「マスコミ志望」の学生に会ったりすると暗澹とした気持ちになったのを思い出した。そういう人たちはこの映画を見て「私にはムリ」っておもうか、レイチェル・マクアダムスのように傷だらけの笑顔で頑張るかどちらかにしてほしい。