Devil's Own

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『スーパーマン・モーション・ピクチャー・アンソロジー』(The Complete Superman Collection)

"Superman"-"Superman Returns"1978-2006/US

8月末の発売がアナウンスされていたBDボックス『スーパーマン・モーション・ピクチャー・アンソロジー』がいつのまにか無期限発売延期になってしまっていた。なんだよもーと思って調べているうちに字幕、吹き替え含めてまったく同じ仕様のUK盤が発売されていることが発覚。amazon.ukで送料含めても25ポンド以内、日本円で3000円ちょっとだったのですぐに注文した。リージョンフリーで国内のプレイヤーでも問題なく再生できます。すごいおすすめ。あやうく2万近く出して国内盤を買ってしまうところでした。発売中止してくれてありがとう!
 内容は第1作『スーパーマン』の劇場公開版とディレクターズカット版、『スーパーマンII』のリチャード・レスター監督による劇場公開版『冒険編』と途中降板したリチャード・ドナーが再編集した『ドナー・カット版』、第3作『電子の要塞』、第4作『最強の敵』、現時点で最新作となるブライアン・シンガー監督の『スーパーマン・リターンズ』、そしてボーナスディスクの計8枚。『IV』以外の劇場公開版にはすべて吹き替えを収録。メイキングやコメンタリーはもちろん、フライシャー兄弟のアニメ版、スーパーマン50周年を記念したテレビ特番などの特典も充実している。BDボックスとしては昨年の『エイリアン・アンソロジー』と並ぶ神ボックスですね。特典はもちろん見尽くせていないが、とりあえず本編はすべて見た。画質はこの時代の映画として及第点だが(十分高画質だが。BDの画質に慣れてしまうのはこわい)音質がよくてジョン・ウィリアムズのあのテーマ曲が流れてくるだけで上がる。勇壮なテーマの中、ケープをはためかせ悠々と空を飛ぶクリストファー・リーブの雄姿に、911以降決定的に揺らいでしまったアメリカの自信と明るさがよみがえるようだ。『冒険編』の終盤、星条旗を持ったスーパーマンホワイトハウスを修理にやってくるシーンなどともすれば失笑の的だが(私もちょっと笑ってしまった)「かつて立派なアメリカ人がいたのだ」と感傷的な気持ちにもさせられる。『グラン・トリノ』でも『プリンセスと魔法のキス』でも『トゥルー・グリット』でも『ザ・ファイター』でもいいが、ここ数年公開されたいくつかのアメリカ映画の傑作が共通してあこがれるもの、その眼差しの先に『スーパーマン』があるのではないか。評判が悪くて続編企画は頓挫してしまった『スーパーマン・リターンズ』もどこか失われたアメリカへの鎮魂のようでもあり、野心のようでもある。こうした点において『リターンズ』はもっと評価されるべきだと思う。今であれば『スーパーマン』が持つメッセージをうまく消化できるかもしれない。新シリーズの監督にはザック・スナイダーが決まっているが、『ウォッチメン』を通過したスナイダーは『スーパーマン』をどう料理するのか。それまでこのBDボックスを味わい尽くしておきたい。
The Complete Superman Collection