Devil's Own

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『贖罪(#1.フランス人形)』(黒沢清)

"Shokuzai(ep.1 French Doll)"2012/JP
 
今年もよろしくお願いします。今年最初に見た映画は『男はつらいよ 寅次郎春の夢』でした。年末からWOWOWでシリーズ全作放送をしていたので。WOWOWは「町山智浩のトラウマ映画館」を目当てに先月加入したが暇を持て余す年末年始にとても助かった。あの何とも言えない退屈な時間と『男はつらいよ』の親和性はやばいですよ。そんな頼もしい有料チャンネルWOWOW湊かなえ原作、黒沢清監督の連続ドラマ『贖罪』が始まった。なにしろ『トウキョウソナタ』以来の新作である。期待はいやがおうにも高まる。全5話。これから毎週黒沢清の新作が見られるなんて楽しみでしかたない。忘れないようになるべく感想を書き留めておく。
 田舎町で1人の少女が殺害された。4人の同級生が犯人を目撃しているが顔を思い出すことができない。被害者の母親(小泉今日子)は犯人逮捕に協力できなかった4人の少女を責め立て「犯人を見つけなさい。でなければ、私が納得できるような“償い”をしなさい」と言い放つ。トラウマを抱えたまま成長した4人の15年後をオムニバス的に見せていく模様。第1話のゲストは蒼井優。事件の衝撃のせいか身体が成長を止めてしまった(初潮がこない)女性。男性恐怖をぬぐえず、女性だけの職場で働いていた彼女に大企業御曹司(森山未来)との縁談が持ちかけられる。
 通常のテレビドラマではおよそ考えられない暗く不吉なルックにしびれるが、陶然とするような移動撮影やリズミカルなカット割りは抑えられ「わかりやすい」描写が目立つ。惨劇の現場となった体育館の恣意的な散らかり具合や子どもたちを淡々と責め立てる小泉今日子のキャラクターなどはいかにもテレビ的(もっと言えば『告白』的)であり困惑したが、後半蒼井と森山の異様な結婚生活が始まってからは引き込まれた。特に蒼井優はキャリア屈指と言っていいほど美しく撮られているのではないか。度を越したピグマリオンコンプレックスに完璧に応えながら、徐々に狂気と暴力性を育てていく女性像をうまく演じていた。『怒りの日』のリスベット・モビーンとまではさすがにいかないがよくここまで「魔女」になりきったなとおもう。