Devil's Own

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『特命戦隊ゴーバスターズ』

"Tokumei Sentai Go-Busters"2012-2013/JP

 スーパー戦隊シリーズの第36作『特命戦隊ゴーバスターズ』が終わりました。昨年の『海賊戦隊ゴーカイジャー』ほどのお祭り感はなかったのですが、さまざまな新機軸やかっこいいアクションとガジェット、魅力的な登場人物、小林靖子ならではの安定したシナリオ構成で一年間とても楽しめた。アニバーサリーシリーズであった『ゴーカイジャー』を経て、デザインやコンセプト、構成など随所に新しい試みを見られた意欲作。視聴率こそ苦戦したようですが、スーパー戦隊史におけるエポックメイキングな作品としてきっと評価されるだろう。しかし、それ以上に重要だったのは『ゴーバスターズ』は311以降、初の戦隊ヒーローだったという点だ。架空のエネルギー「エネトロン」をめぐる戦いという設定からも製作者側が「311後の世界」を強く意識していたことがうかがえた。結論からいうと残念ながらエネルギー問題については当初の期待ほど深く掘り下げられることはなかったが、「取り返しが付かない悲劇」を真正面から描いた点は評価したい。13年前に家族と離れ離れになったゴーバスターズのメンバーは「全部元に戻す」ということをモチベーションとして戦ってきたが、中盤で「元には戻せない」ということが明らかになってしまう。私もいち視聴者として最終回には「すべての人々が救われるハッピーエンド」と楽観視していたふしがあるので、ストイックな展開にはかなり驚いた。「311以後」の子どもたちに向けて物語を紡いでいく―。そんな覚悟さえ感じられた29、30話は涙なしには見られない屈指の傑作回になっている。31話以降は結果としてこの2話のテンションを上回ることはなかった気もしているが、コミカルとシリアスの配分もよく、飽きずに見ることができた。正直に告白すると私が『ゴーバスターズ』を熱心に見ていたモチベーションの9割は小宮有紗さん演じるイエローバスター/宇佐見ヨーコの健康的な美しさだったんですけどね。アクションも頑張っていたし、天真らんまんでちょっと生意気なキャラクターも小宮さんのルックスと見事に合致していて近年の戦隊ヒロインの中では断トツの素晴らしさでした。何より1年間通してあの衣装で頑張った小宮さんのガッツもたたえたい。「小宮有紗」や「宇佐見ヨーコ」でグーグル検索しようとすると候補に「ふともも」と出てくるのはどうかともおもいましたが、それだけトレードマーク化したことの証左だろう。小宮さんがエゴサーチして、自身のスレッドが「小宮有紗ちゃんのムチムチふともも●本目」というタイトルであることにショックを受けないことを願うばかりです。戦隊ヒロインはちびっこにとってのセックスシンボルという側面もあるので面目躍如ですよと励ましたい・・・。小宮さんを始め、西平風香さんが演じた司令室オペレーター・仲村ミホ、水崎綾女さんが演じた悪のヒロイン・エスケープと女性陣が健闘したシリーズだった。三者三様の魅力があってよかったです。水崎さんは傑作『キューティーハニー THE LIVE』でもりんとした存在感を示していたが、やはり特撮ばえする女優だとおもった。いつか坂本浩一監督にも演出していただきたいものです。悪役といえば陳内将さんが演じたエンターにも触れておきたい。久々に第1話から最終話までを貫徹したレギュラー悪役となった。やっぱり悪役はこうでなくちゃね。慇懃で芝居がかったキャラクターは昨年のバスコにも通じますが、整った顔立ちでデータらしい表情を体現した陣内さんの演技により、また違った魅力を放つ名悪役になった。バスコと同様、途中から戦闘向きに変身するパターンとなりましたが陣内さんじたいの身体能力も非常に高く、かっこいいアクションシーンを何度も見せてくれた。悪役レギュラーは中盤から登場したエスケープとのふたりだけでしたが、必ずしも協力し合わない独特の関係性で動いていてドラマを奥深いものにしてくれた。俳優が演じる悪役の魅力を再認識できたシリーズでした。次作『獣電戦隊キョウリュウジャー』の悪役側は残念ながら、現時点ですべてきぐるみとわかっているのですが、リーダー格と4幹部、さらに背後にラスボスが潜むというストレートな組織図となっているので『ゴーカイジャー』では成し得なかった濃密な仮面劇を期待したい。シリーズ全体も一転してチャイルディッシュな方向性のようですが、ライダーシリーズから監督・坂本浩一と脚本・三条陸が登板、既に注目が集まっている。『ゴーバスターズ』とは違ったニュースタンダードを築き上げてほしいです。