Devil's Own

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『映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』(寺本幸代)

"Draemon:Nobita In The Secret Gadgets Museum"2013/JP

 評判のいいドラえもん映画最新作。このブログに全作品レビューを載せたのももう2年以上前になる。当時の私が全作品を観るうえで気をつけたのは、全作品なるべく分け隔てなく評価しようという点だった。一般的にドラえもん映画で評価が高いのは藤子・F・不二雄先生が原作を手がけた作品群だとおもう。それらの作品がすばらしいクオリティであることに異論はないが、だからといってF先生の死後に生まれた作品やキャストリニューアル後の作品を原理主義的に貶めることだけはしたくないと。『恐竜』と『恐竜2006』は圧倒的に前者が優れている…と書いてはいるが、それはキャストがダメだからというのではなく演出、作劇上の問題を根拠とした評価だ。読んでもらえればわかるとおもう。2006年にキャスト、スタッフがリニューアルされてすでに8作目。「わさドラ世代」も成長しオピニオンを獲得し始めるころ。そろそろ「のぶドラ原理主義」の論調にうんざりしているかもしれない。私は「保護者」ではない(そして原作のキャラクターに近い)水田わさびドラえもんにも独自の魅力があるとおもっている。が、これといった代表作がなく歯がゆい気持ちだった。長年監督を務めてきた芝山努の降板も大きいと思う。だから「わさドラ世代」最初の傑作の誕生を素直に喜びたい。
 ここ数年、旧作リメークとオリジナルを交互に製作していたが、今回は久々に2年連続のオリジナル作品。スケール感に乏しい『奇跡の島』に続き、今回の舞台は『ひみつ道具博物館』と聞いたときは正直期待していなかった。やっぱりドラえもん映画にはワクワクしてちょっと得体の知れない世界を見せてほしいわけです。しかし今回はこの限られた舞台設定が功を奏した。まあ、スケールは小さいのは確かなんですけどね。しかし「のぶドラ」を意識しするあまり、風呂敷を広げすぎてストーリーが瓦解してしまうのがこれまでのわさドラ映画の欠点だったとおもうんですよね(その瓦解ぶりがほとんど前衛の域にまで達してしまったのが怪作『緑の巨人伝』である)。ドラえもんをめぐるミステリー仕立てのストーリーにひみつ道具の小ネタをちりばめ、のび太ドラえもんの関係性に着地させる。ほんとに小さな物語だけど意外と今までおろそかにされがちだった部分ではなかったか。ようやくわさドラ世代の『恐竜』にたどり着いた気がしますね。もう今後はオリジナルでいいよ、ともおもうが来年は『大魔境』リメークなのだそうだ。ふむ。