2018年の映像ソフト12選
ことしも封切り映画は20本くらいしか見ておらず、ますます「在宅派」が進んでしまいました。というわけで、ことし購入して「よかった!」というBlu-ray、DVDソフトを書いていこうとおもいます。作品内容はもちろんですが、あくまでパッケージとしての満足度に重きをおいたラインアップとなっています。
『ネバーエンディング・ストーリー ニューマスターコレクターズエディション』(TCエンタテインメント)
国内で2度目のBlu-rayリリースです。インターナショナル版とエクステンデッド版、特典ディスクの3枚組。前回との違いはインターナショナル版がHDリマスターやエクステンデッド版のドイツ語音声収録、ウォルフガング・ピーターゼン監督のコメンタリーなど。インターナショナル版の日本語吹き替えは前回と同じく、テレビ放映版とソフト版の2種類収録されています。
インターナショナル版の画質は、目が覚めるほど向上ではないですが、普段はこちらを見ることが多いのでうれしいところ。コメンタリー好きなので音声解説もうれしい。特典ディスクにも初収録のメイキングドキュメンタリーを収録。当時の技術の粋を集めた特撮技術の裏側が見られます。
アウターケースが劇中の本を模したデザインになっていたり、リマールが歌うヒット曲「Never Ending Story」のミュージッククリップが隠しコマンドで見られたりなど遊び心が満載。高いけれど、買い替える価値のある商品でした。逆に前の商品の意味がなくなっちゃったけど。
『デッドプール2(4枚組)』(20世紀フォックス)
本編と劇場公開版より15分長い「スーパードゥーパー$@%!#&カット」の2種類に、それぞれBlu-rayと4KUHDBlu-rayをコンパイルした4枚組。この作品は劇場で見たときは情報量の多さゆえにとっちらかった印象を受けたのですが、ソフトでくり返し見ているうちに評価が急上昇。小ネタが多いのでソフト鑑賞向きの作品だなあと思いました。1作目はヒーロー誕生譚としてよくまとまっていたけど、コミックスを読むと、こっちのほうがデッドプールっぽいんだよね。長尺版はさらに特盛感がすごい。暴力シーンを追加しただけに見えるけど、ところどころでカットが変わっていたり、音楽が差し替えられていたりと演出上の違いもあので油断できない。さらにメニュー画面は、劇中でも効果的に使われているa~ha「Take On Me」をBGMに、VHS画像風の名場面が流れるという非常に凝ったもの。音声解説や特典も面白い。時間をかけて作品世界を味わい尽くせるようなこだわりにあふれていて、映像ソフトの楽しみを再認識させてくれる。新作映画では断トツのパッケージでした。
『2001年宇宙の旅 4K ULTRA HD』(ワーナー)
ボーナスでテレビとプレイヤーを4K化したのですが、この『2001年宇宙の旅』はあまりの高画質に愕然とした。DVDからBlu-rayに買い替えたときでもこんなに驚かなった気がする。往年の映画にデジタル処理で修正を加えることの是非は差し置いても、この映像体験は個人的にはいちばんの衝撃だった(本当は劇場で体験しかったけど)。画質の向上に目がいきがちですが、このBlu-rayは日本語吹き替えが初収録されたこともうれしいポイント。
ただ、本作品は今後もさまざまな形でリリースされるとおもいますし、決定版にはたぶんならないでしょう。まったく同じスペックでの廉価版が近い将来リリースされる可能性も低くないとおもいます。リージョンフリーの海外版にも日本語字幕はついているそうです。なので決して商品としての優位性が高いとはいえませんが、現時点でのインパクトという意味であげておきます。
『八月の鯨 日本公開30周年記念ニュー・デジタル・リマスター』(パラマウント)
夏が来ると、自然とDVDを引っ張り出して見返してしまう映画。これまで安かろう(画質)悪かろうのDVDに甘んじていましたが、ようやくまともな商品が出ました。海と夏空の美しいブルーを堪能することができます。
まずはリリースされたことを喜びつつ、輪をかけてうれしかったのは110分にもおよぶ特典映像。リリアン・ギッシュ、ベティ・デイヴィスらキャスト陣や主要スタッフのインタビューがほぼノーカットで入っています。特にベティのインタビューがめちゃくちゃ面白い。たばこをふかしながら、皮肉なギャグを飛ばしたり、中身のない質問にダメ出しをしたりする奔放ぶりに、インタビュアーがたじたじになっていて笑ってしまった。
『浮草 4Kデジタル復元版』(角川書店)
小津安二郎監督作の4Kプロジェクトも徐々に進み、今年は松竹が『お茶漬けの味』、『東京暮色』、『早春』をリリース。唯一の大映作品の『浮草』は角川からリリースされました。作品内容は言うまでもありませんが、特典映像のフィルムセンターでのデジタル復元をめぐる講演がすごく面白かった。音声解説は既存DVDの流用だけど、ちゃんと収録してくれてうれしい。角川書店は今年、シャブロル、ブニュエル、ルイ・マル、川島雄三などの充実のラインアップ。シネフィルレーベルからは『狩人の夜』、『暗殺のオペラ』、『サテリコン』なども発売され、一時期の紀伊国屋を思わせる勢いでした。大映の小さな作品も地道にDVDで出し続けてくれているし、本当に良心的。東宝、東映にも見習ってほしいですね。今後もしっかり買い支えていきます。
『DEVILMAN crybaby COMPLETE BOX』(アニプレックス)
1月にNETFLIXで公開された湯浅政明監督の新作。まずもって作品がとにかくすごかった。原作にほぼ忠実なんだけど、舞台を川崎に移し、陸上部やラップなどのアレンジを効果的に加えることで、現代的な物語にアップデート。「『デビルマン』って、今の時代にわりと現実化してないか」と思い至りゾッとした。全10話にコメンタリーとサウンドトラックCD、メイキング本とアートワーク集までついて、とにかくでかい。置き場所に困るという難点はあるものの、配信アニメのパッケージなんだから、このくらいやってもらわないと。アニメシリーズのソフトでいつも思うのは、コメンタリーには声優ではなく監督、脚本のスタッフ陣だけでつくってほしいということ。声優さんのコメンタリーが好きな人もいるんだろうけど、ぶっちゃけ内容が薄いんですよね。キャストとスタッフの2種類収録とかにはできないものだろうか…。特に湯浅作品のようにディテールにこだわったアニメの場合は、ワンシーンワンシーンの解説を聞きたい気がする。
『100イヤーズ・オブ・オリンピック・フィルムズ』(クライテリオン)
ここからは輸入盤。1912年のストックホルム五輪から、2012年のロンドン五輪まで100年間のオリンピック記録映画計53作品をどどんと網羅した32枚組のBlu-rayボックス。正直、オリンピックにそんなに興味ないのですが、2Kデジタルレストアの『東京オリンピック』(市川崑監督、1965)や、20世紀初頭の記録映画の物珍しさにコレクター欲をくすぐられ、買ってしまった。結果、会社の同僚に平昌五輪の話題をふられると、オリンピック記録映画の話をし始めるめんどくさいシネフィルおじさんが爆誕。これね。思った以上に面白いんですよ。「記録映画」然とした素朴な作品が、ベルリン五輪2部作をきっかけにドラマチックになり、運動会が国際的な情報発信の場と変容していくさまも興味深い。それでもアスリートたちの鍛え抜かれた肉体、研ぎ澄まされた運動の美しさ、生命力だけは変わらないんですよね。よく知らない人たちが一生懸命走ったり、跳んだりしている映像そのものに、原始的な快楽がある。スポーツと映画の親和性をあらためて知れる作品群でした。
『羊たちの沈黙』(クライテリオン)
かなり初期段階でクライテリオンのラインアップに入っていた(カタログのナンバリングは♯13)90年代のクラシックを、Blu-rayで再リリース。作品のシンボルである蛾の模様を、ロールシャッハ・テスト風にデザインしたパッケージも秀逸。『羊たちの沈黙』は現行の国内Blu-rayがかなりお粗末な画質で不満だったが、さすがは安心のクライテリオンブランドとあってすみずみまで生き届いています。リピート率でいえば、間違いなく今年一番のソフト。
『ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』(クライテリオン)
ポール・シュレイダー監督が、三島由紀夫の生涯と作品世界を映像化した1985年映画。
日本では公開すらされなかったまぼろしの作品で、ジョディ・フォスターもお気に入りらしい。私も今回初めて見た。緒方拳演じる三島が自決する最後の1日を追ったドキュメンタリー風のパートと、幼少期から「楯の会」結成までの回想パートに、「金閣寺」、「鏡子の家」などの文学作品を映像化したパートをつなぎあわせるややこしい構成。文学作品パートは石岡瑛子が美術を担当し、舞台のように抽象化されている。これがめちゃくちゃ面白い。劇中後は、ほぼ日本語だし、今後、国内で発売されることもないと思うので買いだとおもいます。
『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』(アロービデオ)
クライテリオンが取りこぼしがちなグラインドハウス映画を高スペックでリリースしてくれる英アロービデオが、石井輝男のカルト傑作を満を持して発売。すでに昨年、国内版DVDが出ていますが、2K レストアの高画質に加え、共同脚本の掛札昌祐さんの撮りおろしインタビューや塚本晋也、河崎実のインタビュー映像など特典も満載でした。ジャケットは、ほかの日本映画と同じく国内公開時ポスターとのリバーシブル仕様。それにしても、名画座のプログラムをチェックして見に行っては、劇場に必ず一人はいる「笑い屋」にイラついたり、町田のあやしげなお店で劣悪画質の海賊版DVDをつかまされ落胆したりしていたのがほんの十数年前なのに、すでに隔世の感がありますな。
『影なき淫獣』(アロービデオ)
ブログで紹介したおもしろいジャッロ映画。くわしくは過去記事を。
『シェラ・デ・コブレの幽霊』(KLスタジオ)
出たこと自体がニュースな幻の恐怖映画。くわしくは過去記事。