Devil's Own

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『座頭市逆手斬り』(森一生)、『座頭市地獄旅』(三隅研次)

座頭市逆手斬り』(森一生

"Zatoichi and the Doomed Man"1965/JP

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第11作。市が百叩きで罰せられるショッキングな冒頭に始まり、同じ牢に入れられた島蔵という老人から、無実の罪を証明してくれる知人を連れてきてほしいと頼まれるいきさつが、フラッシュバック形式で語られる。釈放された市は、島蔵の頼みをあっけなく反故にする(ひどい)のだが、ふしぎな因果に引き寄せられるように、島蔵を陥れた黒幕へと引き寄せられていく。本作には市と対等に勝負できるヒール役は登場しないが、市の名をかたる小悪党「偽座頭市」が登場。松竹新喜劇藤山寛美がひょうひょうと演じている。基本、コメディリリーフ的な役回りなのだが、うそを重ねすぎて「本当の自分が誰なのか時々わからなくなる」と市に語る場面などはそこはかとないペーソスにあふれる。中盤で島蔵の息子だとわかるが、さして物語には絡むことなく、ラストで役人にしょっぴかれながらも、まだほらを吹き続けているというおかしくも、哀しいキャラクターなのであった。ストーリーに無関係なのだが、海を見たことがない市が、見知らぬ少女に海について教えてもらう場面も印象的だ。

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座頭市地獄旅』(三隅研次

"Zatoichi and the Chess Expert"1965/JP

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第12作。敵役に名優、成田三樹夫伊藤大輔が脚本、三隅研次が演出を手掛け、さまざまな登場人物の因縁が情念が交錯する重厚な群像劇に仕上がった。成田演じる十文字糺は、殴られ屋で生計を立てる将棋好きの浪人。今の境遇に落ちぶれたバックストーリーなどは語られないが、ニヒルな存在感でひさびさに深みのある悪役となった。十文字が自分の過去をしる男を抹殺する場面の引き算演出、目隠し将棋を指しながら市と刃を交える決闘シーンなど緊迫感のある編集がさえる。岩崎加根子が演じるヒロインはお種で、万里昌代が演じた初代ヒロインの存在がかなり久しぶりに言及される。お種が顔のほくろを市に確認させる、あの印象的な名場面も再現。お種(2代目)が、死んだ初代お種にやきもちを焼く様子がかわいらしい。

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