Devil's Own

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『ヴェノム』(ルーベン・フライシャー)

"Venom"2018/US

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『ヴェノム』見てきました。いやー、ひどい脚本でしたね。でも満足しました。『マレフィセント』で感じた怒りはなかったですね。ヴェノムにはそこまで思い入れなかったんですが、「ちょっとフィギュアほしいな」ってくらいには好きになりました。

 画面は「ダークなSFアクションでござい」ってルックなんだけど、どこもかしこもスキだらけ。それでいて、こうした欠点がどうしようもないチャームになってしまっている。まるで映画そのものがヴェノムのような存在でした。画調で目指したというジョン・カーペンターの映画にも近いものを感じますね。

 ライフ財団の警備はなぜあんなにガバガバなのか。重大な被験者がいるラボに監視カメラのひとつもなく、警備員の一人も置いていないのはどういうことなんだよ。そもそもヴェノムはなんでそんなにエディのこと気に入っちゃったわけ?いつ?どのタイミングで?とか、いろいろあるんですよ。おかしなところが。こんなに粗の多い脚本って本当に久々に見た。けど、いいんですよね。「あそこ何なんだろうね」とか「そんなわけあるかー」とかいう語り自体が、なんだか楽しい。そういう映画ってあるじゃないですか。ツイッター上で2次創作のファンアートが量産されているのも、さもありなん、という気がする。

 エディとヴェノムのユーモラスなやりとりに『寄生獣』を思い出す人も多いとおもうけど、ヴェノムはミギー以上に物分かりがいいんですよね。早い段階でエディのジョークに応えたり、恋の助言をしたりする。初めからいいやつ過ぎるのが、少し物足りなかった。エディとシンビオートの価値観のすれ違いや衝突をもっともっとていねいに描いたうえで、終盤にヴェノムの「人間臭さ」が出てくれると、もっと燃えたんだけどな。