Devil's Own

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『座頭市関所破り』(安田公義)、『座頭市二段斬り』(井上昭)

座頭市関所破り』

"The Adventures of Zatoichi"1964/JPf:id:DieSixx:20181223200343p:plain

シリーズ9作目。市が立ち寄った宿場では、代官と結託し、旅芸人たちかあ法外な金を巻き上げているやくざ一派が幅を利かす。市は、父の行方を探すお咲(高木美和)と知り合うがお咲の父親は宿場の陰謀に巻き込まれ、すでに殺されていた…。座頭市が旅先で知り合う庶民との交流を深めながら、悪党を成敗していくという基本スタイルがほぼ確立され、演出、演技、脚本のすべてが円熟の高みに達している感じ。市の腕を見るや「わしはやらん。一両で命は捨てれん」と言ってあっけなく逃げ去る用心棒、市にお咲を逃がすように頼まれたのに酒代欲しさに寝返ってしまう老人、市に斬られたふりをしてそっと地面に斃れる小悪党など人間の弱さ、ずるさを感じさせる描写が、何とも言えない滋味を与えている。市とお咲を助ける芸人の子供二人もかわいらしい。

 敵役の用心棒として登場する平幹二郎もなかなかいい味を出している。雪のふりしきる中の対決もムードがあるが、わりとあっけなく敗れ去る。

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座頭市二段斬り』(井上昭)

"Zatoichi's Revenge"1965/JP

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第10作。郡代とやくざが手を組んで、女をだまし、女郎屋に沈めてこき使っている。市のあんまの師匠の娘役として坪内ミキ子が3度目の登場。10作目ともなると、同じキャストの再利用も多く、記憶が混乱してきますね。くわえてタイトルと内容があまり関連性がないのも、記憶の難度を増している気がする。

 市の師匠は何者かに殺されてしまっていて、娘は借金を押し付けられて女郎屋に幽閉されている。師匠の犯人捜しを主軸に物語が進む。いかさま賭博で身銭を稼いでいるが根は善良な渡世人三木のり平、歌の上手い一人娘役になんと小林幸子が出演していた。全然気づかなかったなあ…。

 さらに師匠殺しの真犯人である今回の敵手には加藤武。非常に重厚な演技で見せるが、今回もあっけなく市に敗れる。シリーズを重ねることで市の強さがインフレを起こしているのと、役者として勝と釣り合うかという問題もあり、敵役のキャスティングは悩ましいところだ。

 テレビ時代劇を多く手掛ける井上昭が初登板。井上は溝口健二森一生の助監督も務め、本作を見る限りでも高い演出力がうかがえるが、あまり知名度は高くありませんね。撮影は森田富士郎。奥行きを生かした構図は森田の手腕によるところも大きいのだろうか。

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