Devil's Own

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パラノイアによる黙示録的「ディスカバリー」―アブナイDJ・JUSTCEの偽悪性、ゴス、ポップネス

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 いやーすごいねこのアルバム。昨日は予想外のポップさにはしゃぎすぎて「セカンドディスカバリー説」に同調してしまったが、このアルバムが孕んでいるエモーションは近未来的で都市的な「ディスカバリー*1乃至はダフトパンクの持つ世界観よりも、もっと不穏で攻撃的。「ディスカバリー」が未来絵図だとすれば、ジャスティスのこのファーストアルバムはアポカリプスといったところで、大胆なストリングスアレンジを施した大仰なオープニングなどはどう聞いてもあの大名曲「ゴジラ」のテーマトラックで、プレイボタンを押した瞬間に異様な万能感と不穏感が聴く者の精神を支配していく。とても不穏で、恐ろしいのだが、その過剰さは偽悪的ですらあり、大笑いせずにはいられない。彼らがリプレゼントする「悪」は、欧米を支配するキリスト教的な「善」への対立概念であり、その背徳感はというと、このブログで栗山千明などを論じるときに度々登場する「ゴス」のコンセプトに共通する性格を持っている。*2先ほどアポカリプスという表現を用いたのも、このアルバムから発散される「ゴス」的性格からの発想である。「十字架」というアルバムタイトルも、単に「CROSS」と付けるのではなく、十字架のシンボルを用いることで、あくまでもその象徴性を強調していることから、彼ら自身もそういった偽悪に対してとても意識的なのだと感じる。MUSEとかは本気でやってそうだけどね(笑)真っ黒なジャケットに横たわる十字架が描かれた不吉なアートワークを裏返せば、「ジェネシス(創世記)」「ファントム(亡霊)」「ヴァレンタイン」「ストレス」などメガロマニアックなタイトルが羅列していて、爆笑を禁じえない。特に「ストレス」は、暴力への衝動をそのまま表現した劇薬の如き曲で、終盤のメランコリックなムードから間髪入れずに、「ウォーターズ・オブ・ナザレス」の、例の喧しいイントロが「ブウィーーーーーン」とか、空気も読まずにカットインしてきて、その野蛮性とアドレナリン暴発度が最高にアブナイ。
 大体自らJUSTICEと名乗っている時点で、あの悪名高い80年代の素晴らしい偽悪バンド・ポリスを連想させるし、*3しかもタイポグラフィーが、ど真ん中の「T」が十字架風にデザインされていることから鑑みても、特にキリスト教的悪を自ら演じて見せようとする偽悪の精神は実に徹底している。
 とはいいつつ、先行シングル「D.A.N.C.E」のようなまんまジャクソン5のキュートでポップなキラーチューンも入っているのだからこの僕らはJUSTICEを愛さずにはいられない。この曲聴いて、ビデオも最高に可愛くて、ときめいちゃった女の子が、アルバム買ったら、パラノイドな世紀末地獄絵図でしたぁなんてこと想像しただけで楽しいじゃないか。
Justice「D.A.N.C.E」

Justice「Waters Of Nazareth(Release Party)」

*1:

Discovery

Discovery

*2:栗山千明の誕生日の思う痛々しいゴス論

*3:ポリスの場合の彼らが演じた悪はパンク精神という「信仰」に対するものだった。