Devil's Own

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マシンガールが我が家にやってきた

片腕マシンガール【初回限定生産 】 [DVD2枚組 ]

片腕マシンガール【初回限定生産 】 [DVD2枚組 ]

 やれやれ、ようやく届いた。今日は一日中家でやきもきしていた。みんな大好き『片腕マシンガール』である。大抵の人は海外版を既に持っていたり、レンタルは一月前くらいに出ていたりはするのだけれど、セル版は待たせただけあってなかなかゴージャスな仕様。金属製の缶の中に入っており、男の子感覚をくすぐりまくる。名づけて「マシン缶」…ダセー!!だがそれがいい。DVDパッケージは、劇場用パンフレットでも使用されていたあの70年代ポスター風の例のあれ。
 通常で1回、英語吹き替え及び日本語字幕で1回、オーディオコメンタリーで1回と立て続けに3回も見てしまった。オーディオコメンタリーには、監督の井口昇、特殊効果の西村喜広、出演の亜紗美、デモ田中で恐らく酒を飲みながらわいわいとやっている。*1井口がこの映画にこめた様々なこだわりを聞くことが出来てなかなか楽しい。亜紗美の初登場が『帰ってきたウルトラマン』の引用(岸田森)だったことには思わず膝を打った。
 初見の印象以上に顔のクローズアップが多いことに気がついた。アクションシーン以外は、基本的に登場人物の顔にフォーカスしており、時折少し引き気味のショットが挿入される程度。テレビというよりも、むしろアダルトビデオの映像に近いように思う。ゆえに画面が少々息苦しいような難点はある。これは初見のときも少し感じたことだが。しかし、主演の八代みなせの美しさ、アクションシーンでの適切なカット割り*2、井口のフェティシズムが前面に押し出されたアイデアやコンセプトが功を奏しており優れた娯楽映画たりえているように思う。亜紗美の力んだ演技には難色を示す人も多いと思うが、これは意図的に「かぶいた」ものだそうだ。よくよく見るとこの他にも登場人物の身振りやセリフ回しに、大映ドラマやアニメを髣髴とさせるどこか懐かしい要素を垣間見ることができる。「安心しろ。俺は医者の息子だ」とか「まさか」「そう、そのまさかよ」などのセリフもその端的なものだろう。
 多彩な残酷描写を有したスプラッタ映画という性格だけでなく、家族の因縁について語りかけてくるドラマという意味でも『片腕マシンガール』は「血の映画」である、というのが僕の見解で、同人誌などでも同じようなことを書いたりしたのだけれど、他にも色々と取りこぼしがあるように思う。たとえば、『アメリカ人に日本的な「萌え」と「ドジ」を教えようと思った』というコメントからもわかるように、井口はこの映画をある種のアイドル映画と捉えているふしがある。それから地方上映の際にこの映画を見に来ていた6歳児(!!)が、残酷な場面を見て目をそむけていたというエピソードを交えつつ『小さい子どもにトラウマを与えることって、僕は大事だと思う』話していたことなども印象深い。というわけでこの映画については、まだまだ自分の中で消化しきれていない部分が沢山あるので機会があれば考えていきたい。
 とりあえずこれから特典ディスクに収録のスピンオフ『Hajiraiマシンガール』見ようと思います。

*1:プルトップを開けるプシュという音まで入っている。

*2:出来るだけワンカットで撮りきることにこだわったと井口自身もコメンタリーで述懐している。