Devil's Own

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『ガフールの伝説』(ザック・スナイダー)


 あまりにも予想通りの出来ばえというか「私達が自慢されたい」ザック・スナイダーなショットの連続にちょっと笑ってしまった。方々で言われているように、人気児童文学『ガフールの勇者たち』を『300』的ヴィジュアルで映像化した作品である。これで言い切った感もあるのだが、血みどろの闘争の当事者がふくろうというところがやはり肝だろうか。アニマルハウスは『ハッピーフィート』でもとんでもないクオリティの羽毛表現を見せてくれたが、加えて今回は、ふくろう特有の仕草、羽毛のもつれや汚れ、豊かな大自然の背景まで細やかに造形されており格段に進歩が見られる。特筆すべきは蛇の造形だろうか。爬虫類の質感をあそこまでリアルに再現した例はちょっと思いつかない。そんな実在感溢れるふくろうたちが鎧と鉤爪で武装してがんがん戦うわけだが、『300』で筋肉隆々の男たちがぶつかり合うよりも遥かに意外性があるし、シュールな光景ではある。が、そこはザック・スナイダーの手腕によって結構カッコよく仕上がっているし、男の子だったらアガるとおもう。私が小学生だったらノートの端っこにふくろうの落書きしまくってるだろうね。映画館で下敷きとか買っちゃって。
 主人公のソーレンの目を通して、神話化された戦争や英雄と現実のそれとのギャップが描かれたりもするのだが、深刻なテーマとして前面化することはない。結局、戦争アクションのアドレナリンとカタルシスに身をまかせているあたり、ザック・スナイダーノンポリ性が表れているとおもった。カリスマ性がある悪役の造形も素晴らしいし、明らかに助長でしかないボーイ・ミーツ・ガールがないのもよかった。物語の大きな軸となる、主人公ソーレンとダークサイドに堕ちた兄・クラッドの確執もなかなかドラマチックだった。ただ、私が唯一納得がいかなかった点もやはりこの兄弟のキャラクター付けである。というのも、このふたりは『スター・ウォーズ』におけるアナキンとルークであるべきで、本来ならクラッドのほうが優秀なふくろうであるべきだとおもうのだよ。この話だと、単に出来の悪い兄がグレてしまいましたってことになってしまっている。戦いの後で両親がクラッドの消息をまったく気にしていないのにはさすがにエリート主義すぎて引いたというか、こっちが月光麻痺みたいになってしまった。兄弟の確執を中心にすえたドラマが好きなだけに、こうした作劇には単純に疑問を感じた。