Devil's Own

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「栗山千明」というイメージの呪縛・責任

 あんなに美しい人を見たのは、今まで生きてきて初めてだった。

 立教大学主催の映画「エクステ」完成試写会&栗山千明トークイベントに行ってきたんですよ。
 僕は有名人が来るとかいうミーハーな動機でどこかに行くことは滅多にないのだけれど、栗山千明だけは別。学生無料だとか、マスコミも結構来るぜとか、そんなことはどうでもよくて、栗山千明を見る。ただそれだけが本当の目的。
 結構近くで見れた。現れた途端空気が変わった。もうとにかく細くて、白くて、髪の毛とかさらさら音がするみたいだった。もうあれだね、このテンションで書くと、絶対史上最強に気持ち悪い文章書いちゃいそうなのでこのへんにしとくけど、マジで泣きそうになったわ。いいよ、別にジャニーズ専属女優になろうが、オタク向けアイドルになろうが、ジャパニーズステレオタイプにデフォルメされようが、何でもいい。栗山千明が世界で一番美人だという事実は絶対だと思います。
 試写会・トークイベント共に立教大学生主催というだけあって、グダグダ感は否めなかったが、評価できる試みだと思う。立教大の放送研究会は作品とか企画のレベルは別にしても、外部との接触に凄く積極的なのは羨ましい。
 さて、今日は、そんな栗山千明のすぐ近くに座っていた立教大学生に対する、僕の理不尽なルサンチマンとジェラシーが爆発する企画レポ。当然いままでになく主観論になるのはご容赦ください。
 トークショーは、司会進行を務める立教大放送研の男女二人と、学生代表のパネラー男女数名の質問に栗山千明が答えるという構成。学生主催とはいえ、ここまでやるのは相当の企画力だな素直に感心した。MC二人は放送研だけあって進行もスムーズではあった。でもね、あまりに栗山千明のこと知らなさ過ぎだと思う。インタビューアーなんだから相手に関するある程度の予備知識を深めておくのは常識だろう。来てくれている人に対して「皆さん本物ですよ!」とか「皆さん今日は自慢してください」とか「滅多にないチャンスですよー」とか芸能人崇拝な煽り発言が目立ちすぎる。あくまで公式の完成試写会なのに、映画のこと殆ど聞かないで、ちょっとググれば解る質問ばっかしてどうするんだよ。「日曜ゲームやってる」とか「マンガ読んでる」とか有名な話なのに、「意外ですねー」ってMCが言っちゃうのかそれ・・・。MC二人のうちどちらか一人だけでも、そういった予習をしていればよかったのだが。というのも僕はこの二人がトークに関してかなりのポテンシャルを持っている人達だということはよく知っているので、そこが残念だった。パネラーの一人にちょっとオタクっぽい青年がいて、彼は栗山千明が反応を示すような質問をよく投げていてなかなかよかった。サクラなんじゃないかという意見も周りでちらほら出ていたが、彼がいなかったら企画は相当薄いものになっていたと思う。彼のせいで、栗山千明のオタク的側面ばかりフィーチャーされてしまったのも、陳腐な感じがして嫌だったし、というかそれ以前に彼に対する嫉妬で正気を保てなかったが(笑)、それでも今回の企画でのあの青年の貢献度は認めざるを得ない。それから別のパネラーの「もし大学生だったらどういう生活を送っていましたか?」という質問は、かなり興味深かったのに、直後にMCが「例えば女子大生に対してどんなイメージがありますか?」という横槍を入れたせいで全てがスポイルされてしまった。そして、「サークルってどんなのがあるんですか?」という栗山千明の疑問に対して、「あたしは女子大生サークルです♪」とか恥ずかしげもなく公言するパネラーの女子に愕然。「企業コラボとか。。あっ、でもお誕生日会とかもやっちゃいます♪」とか説明してたが、それただの高級合コンサークルじゃないか。痛すぎる。彼女がどうしてパネラーなんだと理解に苦しんだ(笑)彼女自分がどんな立場にいるのかわかってたのかなぁ。。相手はハリウッド女優なんだぞ。でも、「私、なるべく室内でできるサークルがいいなぁ」という栗山千明はやっぱりイタいヲタな僕らのアイドルだった。
 普段聴いている音楽に関する質問で、マイ・ケミカル・ロマンスエヴァネッセンスを挙げたのはいかにもだった。

 この2アーティストはある意味でアメリカのサブカル層の最大公約数的な感受性を代弁するアーティストで、今の日本から解りやすい例を引くとすれば、RADWIMPS東京事変のポジションにあるアーティストだと理解してもらえるといい。普遍性よりも時代性を持っているアーティスト。無難な商業音楽ではないが、ある特定のヒエラルキーにとっての最大公約数のリアリティーを反映させた性格のアーティストだ。
 栗山千明マイケミ好きという話は初めて聞いたが、いい意味でも悪い意味でも彼女がアメリカ的なゴスアイドルのシンボルになっているんだなと納得した。日本で言えばしょこたん松田聖子好きを公言しているような感じですよ。ステレオタイプなんだけど、みんな喜んでいるみたいな。ハリウッド出演によって顕著に形成された「栗山千明」のセルフイメージが、彼女のパーソナリティー形成に深く関わっているという端的な例だと思う。邦楽は「土屋アンナちゃんとか椎名林檎さんとかです。」とか至ってシンプルな答えなのに、*1洋楽はマイケミエヴァネッセンス、なのは不自然だと思う。いや、多分彼女は本当に土屋アンナも林檎もマイケミも好きなんだろうが、やはりそこには「フツーの女の子」*2としての「栗山千明」と「ハリウッド製ゴス系アイドル」としての「栗山千明」のイメージに、ある程度の乖離が見られると思う。外部接触を通して、周囲のイメージがパーソナリティー形成に影響を及ぼすことは僕らにも言えることだし、芸能人としてのブランド戦略としても正しいことなので、何ら問題はないのだが、しかしながら彼女は決してエビちゃん巻き髪には出来ないし、ジャニーズの男の子と付き合うわけにはいかない。そうしたら「栗山千明」というブランドが失墜してしまうだろう。大衆と言うのは予定調和で無責任、劇的な変化を嫌うものだから。「坊主頭にしてみたいんです」と無邪気に語りながらも、彼女はそれが不可能であることを知っている。きっと似合うと思うけど。

 肝心の「エクステ」だが、映画としては平常点。園子温水準での評価だとちょっとしんどいかなと思う。

 良くも悪くも栗山千明と大杉蓮の俳優としての個性に依存しすぎている。特に栗ちに関しては、黒髪美少女のホラークイーンのフォーマットを地で行くキャラクター造形が、ここ最近注目されているJホラーとして欧米で売り出す狙いが透けて見えるようで、かなり萎えた。
 ここ最近の園子温が、「ハザード」「紀子の食卓」と次々と傑作をモノにしているだけに、どうしても評価は辛くならざるを得ないよね。でもグロテスクやスプラッターに頼らず、あくまで髪の毛に対する美意識に則った「恐怖」で盛り上げようという意志は評価できる。いずれにしても園子温は監督としては絶好調だと思う。この調子で鈴木清順並みに映画撮りまくって欲しい。
 本物見た後だったから、あまり平常心では観られんかったなってのが本音だけど(笑)

 栗山千明を巡る日米「ゴス」観の相違については以前エントリで取り上げた。(http://d.hatena.ne.jp/DieSixx/20061011)トラバ先での議論も含めて結構解りやすいゴス観を提言できている気がする。

*1:かといって好きな日本のアーティストがレミオロメンとかアクアタイムズじゃなくて本当に良かったとは思うが。

*2:アニメとゲームが大好きなちょっとオタクな性格も含む意味での「フツー」であって、決して女子大生サークルに入る女の子の世界での「フツー」ではない。