『マイ・フェア・レディ』(ジョージ・キューカー)
"My Fair Lady"1964
ヒッチコックが、キム・ノヴァクをグレース・ケリーへ変身させる狂気に駆り立てられたように、キューカーもまた女性を変身させるというオブセッションにとらわれた作家だ。『マイ・フェア・レディ』は、『男装』や『ボーン・イエスタディ』と連なるキューカーの調教願望の集大成といえるかもしれない。しかし本質的には女性であった(ゲイだからね)キューカーの感情移入はつねに女性の側へと傾いていく。ここに男性の性的な視線の介在しない女性の真のうつくしさが立ち現れてくる。「レディと花売り娘の最終的な違いは、どう振舞うかではなくどう振舞われるかなのです」というヘプバーンのせりふはなかなか的を射ているな。作家的な特徴を見つけづらい監督だが、私も少しずつジョージ・キューカーのすごさがわかるようになってきた。大人になるというのはこういうことなのか。
マイ・フェア・レディ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
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