Devil's Own

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『贖罪(#.4 とつきとおか)』(黒沢清)

"Shokuzai(ep.4 Ten Months Ten Days)"2012/JP

 病弱な姉を持つ由佳(池脇千鶴)は愛情に飢えていて、事件当日親切にしてくれた警官に好意を寄せる。欲しいものをいつも姉に横取りされていると感じていた由佳は、姉の結婚相手が警察官だと知り義兄を誘惑する。
 4話目のゲストはわれらがアイドル池脇千鶴。4人の少女の中で池脇だけが「贖罪」の呪縛から解放されている。正確にはそのように高をくくっている状態といえるか。小泉が強いた「約束」の独善性を喝破し、逆に小泉を自らの「呪い」へ引き入れようとするあたりは大した悪女ぶりだ。4話目にして事件の核心に迫る糸口を提示するが、基本軸となるのは楳図かずおの『おろち』を思わせる姉妹愛憎劇だ。はっきり言ってストーリーは偶然性に頼りすぎているところも多くやや精彩を欠く。「偶然」はこのドラマ全体を支配しているともいえるが、今回は偶然を「呪い」だと納得させるだけの説得力が少なかった。そのせいか片時も目が離せない緊密したテンションも薄まったようにおもう。が、久々に見た伊藤歩はかなり怖かった。個人的には池脇や小泉今日子を食っていたとおもいますね。畳に映る影の不吉さで黒沢清が、姉を「幽霊」として描いていることは明らかだ。実在感のない伊藤に対し池脇は「野性的」に描かれている。『スイートリトルライズ』(矢崎仁司)での役柄を踏襲しているともいえるがこれ以上考えられないキャスティングだろう。
 真骨頂といえるのは階段と窓を効果的に用いた演出だろう。姉の自宅は階段を中心とした立体的な構造になっているが緊迫感のある3人の関係を盛り上げるいい舞台立てだった。このエピソードに限らず、階段は常にまがまがしさをたたえていたのだが、終盤ついに処刑装置として機能し始める。引き気味でとらえたワンカットの転落シーンにはしびれました。そしていよいよ来週が最終回です。なんだかもったいない。