Devil's Own

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『闇金ウシジマくん』『るろうに剣心』『映画 ひみつのアッコちゃん』

闇金ウシジマくん』(山口雅俊


 原作未読、ドラマ未見というまったくの前知識なしで見ました。漠然と『笑ゥせぇるすまん』的な物語を想像していたのだが、だいたいそんな感じ。映画を見た後、原作に当たったが、ものすごく面白くて久しぶりにマンガにはまってしまった。映画は原作の「ギャル汚くん」と「出会いカフェくん」の2エピソードを再構成。物語の比重としては前者の方がやや大きめといったところか。ウシジマくんを演じる山田孝之ははまり役と言っていいだろう。債権者を追い詰めていく冷酷さ、何かを諦めたような虚無感、それでいて奇妙な親しみやすさが混在するたたずまいを体現している。映像も編集もいかにもテレビ的で安っぽいのだが、この作品の場合その安っぽさが登場人物の薄っぺらなキャラクターや激安な生活環境に奇妙にマッチングしておりうまく機能しているとおもう。そのぶん原作最大の魅力でもあるまがまがしさはスポイルされてしまっているが。「ギャル汚くん」は数年前に話題になった早稲田大学のレイプサークルを題材にしたと思しきエピソード。主人公を演じる林遣都は好演しているが、ミスキャストだとおもった。彼はイケメン大学生5人組(通称イケメンゴレンジャイ)を擁するイベントサークルを主宰しているが、テンションが空回り気味でイケメンたちには完全になめられているという設定…なんだけどもう明らかにゴレンジャイより林君のほうがイケメンなんだもん。これはダメでしょう。しかし、大学のイベントサークル特有の胸糞悪くなるような軽薄さを映像化しただけで私は偉いとおもう。私の大学にも「業界」(マスコミとか広告とか)にコネ作るためにせっせとイベント打って女の子集めてるクズみたいな大学生がいた。あいつらがどうしてるのか知らないが、どうせつまんない大人になってつまんない仕事してるとおもう。「出会いカフェくん」の主人公ミコを演じるのは大島優子。これはなかなかにはまり役だったとおもいます。周囲の女性がつぎつぎとダークサイドに堕ちていく(母親役の黒沢あすかの品のなさ!)中でぎりぎり踏みとどまっている感じがよく出ていたとおもう。じっさいは高橋みなみの方が適役なんだろうけどね。それではあまりにかわいそすぎるので。

るろうに剣心』(大友啓史)


 公開前に絶賛モードのRTが飛んできたりして期待していたのだが、びっくりするくらいふつうだった。ほめすぎだよ。この手の漫画原作映画にありがちな欠点だが、物語前半をキャラクターの説明に割いているのでけっこう退屈。単純に登場人物が多すぎるとおもう。個々のキャラクターは魅力的だし、動かし方もそこそこ巧いだけに本当にもったいないとおもった。致命的なのは剣心(佐藤健)が薫(武井咲)のことをどうおもってるのかよくわからないというところ。これは終盤の展開に生きてくるのでもう少し丁寧に描写してほしかった。恵先生(蒼井優)を助けに行ってそのあと薫を助けに行くという終盤の展開もなんだか回りくどい。キャストは総じて好演だったとおもう。「ござる」口調も佐藤君がやると嫌味がないよね。武井咲は『愛と誠』を見るまでいまいち魅力がわからないでいたが、劇画調のヒロイン像を違和感なく演じられる稀有な女優ではないか。予告編にも使われている「剣心やめて!」のシーンは切実な演技でけっこうぐっときてしまった。そのあと長々としたせりふでやや興ざめではあったが。香川照之は明らかにやりすぎで今年ワースト級。もう勘弁してっておもった。しかし吉川晃司はよかったとおもいます。評判のアクションには確かに見るべきものがあったが、シーンそのものが長すぎるので物語としてはすごく遅く感じるんですよね。このキャストで監督が三隅研次だったら、終始そんな思いに駆られる134分だった。

『映画 ひみつのアッコちゃん』(川村泰祐


 これも試写段階の前評判はたいへんよかったが、どっちかといえばダメに近いふつうの映画でした。私は基本的に『アッコちゃん』より『サリーちゃん』派ですが、今回の映画版はけっこう期待していたんですよね。フィルモグラフィが割と惨憺たる様相を呈している綾瀬はるかさん起死回生の傑作になる可能性がじゅうぶんにあったとおもいます。魔法のコンパクトで変身能力を手に入れたアッコが大人社会に飛び込み成長していく。プロットは原作よりむしろトム・ハンクス主演の『ビッグ』だろう。それじたいはかまわない。東宝サラリーマン喜劇を再現しようというアイデアも悪くない、悪くないのだが、とにかく脚本がことごとく映画的なセンスに欠けるんですよね。あの株主総会の場面はかったるい。結局、筆頭株主もたいまさこ!)にすり寄るのが重要ってこと?挙句の果には警備員が「実は僕も株主です」とかいって登場して明暗を分ける始末…。いや、だったら警備員さんとあつこの関係をもっと深く描いてよっていう。綾瀬はるかのコスプレも実にやる気のない処理で肩透かし。収穫はむしろ少女時代のあつこを演じた吉田里琴だろうか。もっと登場させればよかったのにね。

 『ひみつのアッコちゃん』第1期アニメのエンディングはかっこよくて大好き。映画ではインストが使用されていました。