Devil's Own

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パーティーピープルという素敵な人々の欠片―The Rapture来日公演@渋谷CLUB QUATTRO

 待望していたThe Rapture来日公演に行ってきた。今日は一日比較的暇だったので、早めに渋谷に向かい、ヴェーラの20世紀フォックス特集で、マリリン・モンローの妖艶さと純粋さを完璧なバランスで兼ね備えたアンビヴァレンスな魅力を堪能する。明日も見に行くことにしよう。映画館を出ると雨が降っていて、仕方なくコンビニで、僕の趣味とは凡そそぐわない鮮やかな空色の雨傘を購入する。ヴェーラで次回特集される「最終兵器・鈴木則文降臨」*1のフライヤーをしげしげと眺めつつ、駅の改札で友達を待つ。
 クアトロに辿りつくまでに意外と時間を食ったものの、整理番号が107番とかだったのですぐに会場に入れ、ひとまず安心。実はクアトロでのライヴは初めてで、リキッド・ルームに比べると幾分ロッカールームが狭い気もしたけれど、フロア自体はとってもいい感じだった。早くも興奮気味。前座はちょっと名前を忘れてしまったのだがDJとMCのデュオ形式のもので、なかなかよいグルーヴと佇まいをしていた。だけれど、ラプチャーの前座かなー?という疑問は無きにしも非ず。大阪は確か8ottoだったんだよな。オーディエンスの反応は上々で、フロアの熱度も適度に高まったのだが、何にせよラプチャーは楽器が多いせいかサウンドチェックに時間がかかり、会場は最初と同じざわめいたテンションへと逆戻りしてしまう。この辺もう少しスムーズに行かないものでしょうかね。
 で、満を持して本人登場。友達と二人で一曲目は間違いなくセカンド・アルバムのリードシングルにもなったジャージーなダンストラック「Get Myself Into It」だろうという意見で一致していたが、意外にも1枚目収録のPILの影響が色濃いナンバー「The Coming Of Spring」で幕を開ける。このことが象徴するように、今回のライヴはラプチャーのパンクバンドとしての資質が爆発したとてもノイジーでカオティックなものだった。1枚目の持つダークネスが、2枚目のスウィートなフィーリングにどのような折り合いをつけるのかに注目していたので、この展開はちょっと意外な気がした。その後、「Get Myself Into It」「The Devil」「Heaven」「Whoo! Alright」など、ラプチャーの真骨頂ともいえるキラーチューンを休む間もなく連発。うねるようなベースライン、エッジの利いたギターリフ、腑抜けたシャウトヴォイスなど全てが発明と言っても過言ではない無敵のダンスナンバー「House Of Jealous Lovers」までもが、ここで登場し、オーディエンスは汗まみれ。フロア前方は完全に男祭り状態で、音楽もダンスもあったものじゃなく、「The Devil」で完全燃焼してしまった虚弱体質な僕は、じりじりと後方へ退き、少し引いたところの比較的女の子が多い一角でマイペースに踊ることにする。驚いたのは女の子達のヴァイタリティーの高さで、前半で暴れまくっていた前方の男子集団が明らかに力を出し切ってだれてしまっているにも関わらず、フロア中心部の女の子は平気な顔でに踊りまくっていていた。1月の髭のライヴ、周囲の女の子が横ノリで、なんだかなぁと思った経験があるので尚更驚いた。なるほど、やんちゃな男の子達と違って、彼女達は最初から自分のペースで気持ちよく踊っていたというわけだ。そんな様子を見るにつけ、やはりラプチャーがパーティーバンドなのだなと納得した。だからライヴ後半は、フロア前方よりも少し後方部の方が活発に踊っているという非常に特異な様相を呈していた。*2最近ゼミの関係で、サークルのH君とクラスメイトのid:nEgiさんとクラブイベントの手伝いをやったのだが、*3そこで、DJの回すUKガラージに乗ってダンスサークルの青年達がパフォーマンス的なダンスを踊っていてへろへろになっていたのを思い出す。H君とも話していたのだが、パフォーマンスとしてのダンスとパーティーにおけるダンスって全く別物で、自分のやりたいように一心不乱に踊り狂えるから楽しいわけで、ラプチャーの音楽もそういう種類のモノだったりする。それだけに、ライヴ会場での詰め掛けるような熱狂的状況もどうなんだという感じがしなくもない。*4そういう意味では、フロア中心部で踊り続けてた女の子達が一番今回のライヴ楽しめていたのかなという気もする。こういうことを、あまり、男子と女子に分けて考えるのもよくない気はするのだが、ライヴみたいな場所だと明らかに体格や体力の差というのは現れてきて、例えばあまりに激しい野郎集団のテンションに女の子がぶっ倒れてしまったりする場面もよく見かける。フジロックのBBSでも毎年見かける、「どうせ見えないんだから、ちびや女はモッシュピット入るなー」とか逆に「背高い奴前来るのうぜー」とかいうコメント問題なども、そう言った性差に起因するもので、もう少しみんなが楽しめる方法はないのかと思う。一方で僕は、背の小さい人に前を譲ってあげる人や、激しいライヴ中に倒れてしまった女の子を助け起こしている人を見たことがあるから、余計にそう思うわけだ。僕もメガネ落としたの拾ってもらったことがあるし。通常の女の子よりも体重が軽い僕なんかでもやはり体力は女の子よりも持つわけで、前方で大暴れし続けることも可能だったわけだが、さすがに今回のライヴは相当にハードだった。だったら最初から、女の子が前方にいたほうが良かったじゃんかとも思うわけで、まぁでもあの興奮状態でそうもいかないか(笑)
 いずれにしても、普段のライヴでは明らかに不利な立場にいる女の子や体力のない人たちが、最後まで楽しめていたということはやはりラプチャーのライヴは、パーティーと呼んだ方がいいのかもしれない。何しろ、ルーク・ジェナーときたら、最後には客席に満面の笑みでダイブするだけでなく、終演後もオーディエンスと写真を撮ったり、サインをして回ったりといつまでたっても僕達の側を離れたがらないのだ。本当に素敵な奴らじゃないか。あの風景は感動的だったし、彼らは本気で僕らに何かを届けようとしているのだと僕には伝わった。だからこそ僕は、例えスヌーザーのリライトだと言われようと、彼らの音楽について多くの人々に伝えたい。アンコールの「Don Gon Do It」の、あの降り注ぐようなイントロダクションを聴いたときの多幸感は何物にも代え難かいからね。
 でも、「Live In Sunshine」聴けなかったことだけが心残りだな。ラストにあれやられたら多分涙が止まらなかったと思うんだが。
 帰りに居酒屋で、友達とサークルについて少しだけ真面目に喋ってから、満員電車に揺られて帰った。電車の中で空色の傘がなくなっていることに気がついた。

1. THE COMMING OF SPRING
2. OUT OF THE RACES
3. GET MYSELF INTO IT
4. SISTER SAVIOUR
5. THE DEVIL
6. PIECES OF THE PEOPLE WE LOVE
7. HEAVEN
8. KILLING
9. W.A.Y.U.H
10.HOUSE OF JEALOUS LOVERS
11.ECHOES
12.THE SOUND

en1.DON GON DO IT
en2.FIRST GEAR
en3.OLIO

*1:「徳川セックス禁止令」のニュープリント版が上映される!

*2:とは言え、前方でも最後までテンションを保っている体力のある男の子もちらほらいたが。

*3:このクラブの「ク」の字というかイベントの仕切り方も知らないど素人が主催するとているという酷い企画だった。呼ばれてきたDJやVJの人たちはとってもセンスのいいチャーミングな人たちだっただけに尚更腹が立つ。

*4:まぁ、それが楽しいってことも勿論あるので難しいところなのだけれど。