Devil's Own

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ロリータ、ロリータ

ロリータ (新潮文庫)

ロリータ (新潮文庫)

 それにしても確か2005年に刊行された若島正によるナボコフの「ロリータ」の新訳は、ここ数年盛んに行われている古典新訳の中でも出色の出来だと常々感じていている。「ロリータ」について書こう書こうと思っているのだが、なかなか何度も読み返していているうちに機会を失ってしまった。ナボコフ流の言葉遊びや謎掛けが随所にちりばめた多層的な構造が「ロリータ」の魅力だが、若島先生の涙ぐましい努力によってオリジナルにおけるそういった遊び心が日本語のテキストのいたるところで再現されている。丁寧な注釈も含めて、再読を重ねればそれだけ新たな発見を楽しむことが出来る。一読して面白いと思える本はあるが、こうまで再読を促す本というのもなかなかない。先日で再読は5度目。
 本作の序盤で、ロリータという名前における発音がいかに美しく魅力的なものについて独白するくだりがあるが、ナボコフとしてはLが二つ重なる名前にオブセッションがあったようである。前にどこかで書いたことがある気がするが、やはり魅力的な女の子の条件に名前を呼ぶときの発語感覚というのは入ると思うですよ。やっぱり「のりこ」だよなぁw
 映画化した「ロリータ」もキューブリックの中では凡作であるし、この素晴らしいオリジナルを考えるとやはり至らずというか別物であると思うが。あれはあれで愛しています。