Devil's Own

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『血とバラ』(ロジェ・ヴァディム)


前々から見たかった「吸血鬼カーミラ」の映画化。どすけべヴァディムのすかした変態性が遺憾なく発揮されている。私の中でヴァディムは、よくも悪くも典型的なフランス人であり、洗練のなかにもつねに軟派な感性が入っているところなんかは割と好きだ。閉ざされた空間、限られた登場人物により繰り広げられるゴシックホラーであり、このムードだけで好きな人にはたまらないとおもう。ウィキペディアには「ストーリーがどうのこうのというより、画像の美しさと音楽の美しさにひたる作品」と身も蓋もないことが書かれているが、終盤モノトーンによって描かれる悪夢のイメージなどはけっこう不気味でこの作品の白眉といえる。この映画において具体的な「吸血」の場面は描かれない。エルザ・マルティネッリとアネット・ヴァディムが醸し出すレズビアン的関係からも、ヴァディムが血を吸うという振る舞いをエロティックな行為として描こうとしていることは明らかであり、これは圧倒的に正しいと感じた。男ひとり、女ふたりという三角関係なかで、男はただ隷属するほかない(しかも男は徹底的に無自覚!)という力学が貫かれているのもよかった。使用人の少女ふたりも生意気でかわいらしく、女の子がふたり集まれば、どうしてかくも妖しく強固な共犯関係が生まれてくるのだろうか。要するにヴァディムはサディストの皮をかぶったドM以外のなにものでもない。