Devil's Own

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デボラ・ハリーの妖女遺伝子

恋の平行線(紙ジャケット仕様)

恋の平行線(紙ジャケット仕様)

恋のハート・ビート(紙ジャケット仕様)

恋のハート・ビート(紙ジャケット仕様)

 やぁみんなファミリー劇場見た?「ウルトラマンA」の最終話、やっぱり圧倒的に感動的だったよね。というわけで誰も待っていないであろうウルトラマンA論は意外と長くなりそうなので、今日はやめます。
 それにしても最近ブロンディばかり聞いていて、中でもこの80年代テイスト溢れる邦題の二枚が素晴らしい。ニューヨークパンクを端として、ディスコ、ニューウェイブ、ファンクと縦横無尽に横断するダンスへの飽くなき探究心。パンクがファッション化していって、ニューウェイブへ過渡していく興奮がいつでも体験できる。「ハート・オブ・グラス」なんかは理想的なディスコソングでCSSもびっくりであるが、そこにはマーケットへと取り込まれているディスコカルチャーへの辛辣でシニカルな視線が挟まれていて、僕らのアイドル、デボラ・ハリーはそんな毒針をウィンクと投げキッスに乗せて撒き散らしている。多分、ブロンディのレコードで踊ろうとしたら、どうもイアン・カーティスのような痙攣した踊りになってしまいそうなのは、そういうわけなのだと思う。デボラの唇に保険がかけられていたのは有名な話だが、デボラの本当の魅力はあの赤い唇から繰り出される毒なのだ。個人的にデボラのヴォーカリゼーションが最も魅力的なのは「恋の地平線」2曲目の「One Way Or Another(どうせ恋だから)」で、この曲はブロンディの真骨頂とも言うべきシンプルなパンクソングでリリックも繰り返しが基本。「I Wanna Get You,Get You,Get You,Get You」と歌うデボラの歌声がだんだんと拳の聴いたモノになってくるスリリングさが死ぬほどカッコいいですなっ。本当にミッシェルがカヴァーしてもカッコいいであろうパブロックで、ギターのサウンドなんかは「キャンディ・ハウス」を彷彿させる。しかし、歌っているのはやさぐれスーツ男チバではなくブロンド美女デボラ・ハリーなので、そのビザールな感覚がやはり魅力なんだと思う。


 ところで「ハート・オブ・グラス」は今年のフジロックで、リリィ・アレンがカバーしていたのがとても印象的だった。全体的にレゲエよりでピースフルな素晴らしいステージだったが、「ハート・オブ・グラス」は終盤にプレイされて、ほぼリリィの即興アカペラという感じだったがとても感動的だった。
 何が感動的かと言えば、リリー・アレンこそ今日においてデボラ・ハリーと同種の毒針を唇から撒き散らす数少ない女性ミュージシャンであり、彼女の代表曲でもあり、切ないコーラスラインが印象的なブリティッシュレゲエ「Smile」がその実、元彼に対する捻じ曲がった恨み言を歌った曲であるという驚きは、それこそ、「恋なんてガラスのハートのように空っぽな作り物なのよ!」と半ば僻みっぽく歌う「ハート・オブ・グラス」に通じるものである。それにデボラ・ハリーとリリー・アレンという二人のビッチを並べると、なんだかヒッチコック映画に登場する二人の対照的なヒロインのようではないか!(滅茶苦茶)そうだ!リリー・アレンこそが現代のデボラ・ハリーだ。とか思っていたら、どこぞやの番組で共演していたのだそうですよ。

  • Lily Allen「Smile」


Alright Still

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