Devil's Own

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ここ数日読んだもの

葬儀 (河出文庫)

葬儀 (河出文庫)

はじめての文学 桐野夏生

はじめての文学 桐野夏生

残虐記 (新潮文庫)

残虐記 (新潮文庫)

野生の思考

野生の思考

 ジュネの「葬儀」は帰省時の飛行機の中からだらだらと読み続けていたが、詩的かつ難解なので散漫な集中力で読むのは非常に難儀だった。男色と殺戮の妄想に満たされた白昼夢の如き倒錯したムードが全編で貫かれており、やはりヒットラーと交わる下りが白眉だ。醜悪の中の美学。この作品を全編味わい尽くすにはまだまだ時間がかかりそう。
 日本文学を代表する12人の作家が、小説に初めて触れる中高生に向けて自選した短編をコンパイルしたシリーズの桐野夏生版。先日も書いたが、あのラインナップの中に桐野夏生が入っているのが実に面白い。著者によるあとがきでは、「小説には毒がある」というタイトルを冠し「若い人たちに対しても毒を減ずるつもりはない」と痛快なサディストぶりを発揮している桐野氏は僕の父親と同い年であった。今回初めて単行本に収録される「使ってしまったコインについて」と「植林」が目当てだが、どれも読み返すのは久々だったので新鮮な驚きと発見に満ちていた。同じく桐野氏の「残虐記」は少女監禁をモチーフにした作品で、文庫化したものを父親が買ってきたので、寝る前に再読。「柔らかな頬」と並び桐野氏の作品の中でも大きな謎と邪悪さを孕んだ作品で、間違いなく傑作だと確信した。少女監禁をモチーフとしたと聞いて淫靡な妄想を膨らませる人間はみな、社会的バイアスに侵されている。桐野はこの作品を通して、社会、というより世間におけるこうした想像力の病理を見事に看破している。
 図書館で借りたりしてこつこつと読んでいたレヴィ・ストロースの代表作がなぜか親父の書斎にあったので、拝借した。トーテミズムの考え方を初めて知ったのは、中学生の国語の問題集か何かだったがとても感動して、当時の日記にレヴィ・ストロースと書き記したのを覚えている。長らく原書を読む機会がなかったが。
 CSファミリー劇場で「ウルトラマンA」の一挙放送を行っているので、毎日午後はそれをだらだら眺め*1夜は本読んでというのが今年の夏の過ごし方となってしまっている。月末に作品を撮るつもりだけれどシナリオがなかなか進んでいない。多分そのうち降ってくるだろうと高を括っていたりするのだが。なので今週はウルトラマンA論載せると思います。

*1:全て3回以上は見ているにもかかわらず!