Devil's Own

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私の中のソドム―鈴木則文「堕靡泥の星 美少女狩り」


 鈴木則文が唯一にっかつで撮ったやば過ぎる大傑作。ビデオで初見したときは衝撃を受けたが、今日スクリーンで見るとなおさらやられた。大和屋竺のペンによって書かれた邪悪な哲学が全編を貫く。SとMの二項対立によって相対化された価値ではなく、オリジナルの思想としてのサディズムに最も肉迫したロマンポルノであると個人的には思っている。観る者のモラルと嗜好性に直接訴えかけてくるという点ではパゾリーニ「ソドムの市」すら凌駕しているかもしれない。「ソドムの市」の場合過剰に露悪的であるゆえに、ある種の距離感を持って見ることができるが、「堕靡泥の星」ではその邪悪な思想が、理不尽な暴力が、大和屋の語り口と則文の映像文体によって驚くほどポップに描かれてしまっている。*1ロマンポルノを初めとする成人映画を見ていると、映画としてはいくら面白くても肝心の濡れ場が単調で、どうしようもなく眠くなってしまうという本末転倒な現象がよくあるが、この映画は一寸たりともテンションが弛緩することなく、観る者の悪魔的な官能を刺激してくる。飛鳥裕子、八城夏子、小川亜佐美と、当時としてはかなり豪華な出演陣に拠るものだけではないだろう。劇中で彼女たちは次々の酷い目に遭わされるが、その全てが淫靡に彩られている。おいそれと賞賛すべき作品では決してないことは勿論承知の上で、この映画で描かれる内容は常識的に考えて不愉快極まりない。それでも「堕靡泥の星」は、僕にとって、映画として、ポルノとして、抗いがたい魅力を持っている。将来子どもが生まれたら絶対見せたくない映画。ごめんなさいごめんなさい。
 それにしても本作が唯一のロマポ出演作となる波乃ひろみは凄くタイプである。そして暗い情熱と倒錯した性欲に身を焦がす主人公を演じた土門峻がやはり素晴らしい。彼も、本作以外に出演作を見ない。実はこの映画で最も色気を放っていたのは土門峻であった。
 どうでもいいけど僕が一番好きなロマンポルノ女優は続圭子だ。

*1:菅原文太カメオ出演というサービス精神を抜きにしてもだ。