Devil's Own

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過剰でエゴイスティックな「LOVE」がビートルズの新作として世界を席捲する悪夢

未だ「処女膜 画像」で検索してくる人いるけど、何なんだ、一体?

授業のインタビュー調査の練習で、ミャンマーからの留学生にお話聞いたのだけれど、色々大変なんだなぁと。電話の交換に国家が噛んでいるので、国の内部事情に関して正直な会話すらできないんだそうな。だから自分の国のことは、ネットとかで調べるしかないんだって。彼女自身が日本で学んだことをちゃんと発揮されるような環境が整っているとは言いがたく、逆に「知りすぎている」から排除されてしまう。だから、卒業しても日本に留まるつもりなんだそう。そんな深刻な状況だとは、殆ど認識してなかったな、僕らは教育を当たり前のように享受しているけど、なんだかそれが途轍もなく大切なことに思える。当たり前なんだが、それを毎日認識することってなかなか難しい、と秘かに自戒。
さて、ビートルズの新作「LOVE」がリリースされた。

LOVE (DVDオーディオ付)

LOVE (DVDオーディオ付)

お先に試聴を終えたsubterraneanさん(id:subterranean)が結構辛辣なレヴューをされていたので、ちょっとだけ覚悟しつつサイトにジャンプして試聴

これはジョージ・マーティンの過剰な愛ゆえのミックスCDといったもの。これでタイトルが「LOVE」なのだから、もう盲目を超えてニヒリズムの響きすら感じる。ジョージ・マーティンビートルズにこんなアルバムを作ってもらいたかったのだろうかね・・「アビー・ロード」B面を擦り切れるほど聴き続け、酔いしれ、自分のミックス・ワークの活躍が減っていったことに不満を募らせていたジョージ・マーティンの自己愛、狂気、偏執的な技術志向が結集した恐怖のミックステープだ。中身は本当にネタの嵐、ビートルズファンなら思わずニヤリと・・どころではない。ビートルズ全曲、というソースを元に試行錯誤を重ね構成した偏執狂のお仕事だ。こんなもの、専門的な編集環境があれば誰だって作れる。いや誰もがこんな遊びをやってみたいに違いない。僕が、真夜中に何時間もかけて、ひとりiTuneを開き、誰かにあげるCDRを作る。多分モチベーションとしては、その行為と何ら変わらないのだ。そんなミックスCD不特定多数の人間に聞かせたとき、リスナー誰もが抱く感情は、痛々しさだけだ。
これはエンジニアとして、そしてビートルズの父親としてのジョージ・マーティンの、最後のエゴイズムだ。
マーティン、もういいだろ。君が単なるエンジニアじゃなく偉大アーティストだったって、みんな解ったよ。君がいなきゃ、ビートルズはいなかった。それもまた事実だよ。ジョンもジョージも呆れてるぜ?
だから、もういいじゃないか。悪い冗談はやめて、リマスターしようよ。

このアルバムのハイライトを敢えて挙げるとすれば、格段に音質向上により迫真性を増した「アイ・アム・ザ・ウォルラス」から、エドサリヴァンのイントロデュース口上を挟んだ「抱きしめたい」だろうな。「ストロベリー・フィールズ」も「トゥモロー・ネヴァー・ノウズ」もめちゃくちゃになっていたけど、「アイ・アム・ザ・ウォルラス」だけはよかった。ジョンのヴォーカルの生々しさが伝わってきて鳥肌が立った。
このアルバムが、「ホワイトアルバム」からサンプリングしたトラックに、JAY-Zの「ブラック・アルバム」のラップを乗せて物議を醸したデンジャーマウスによるマッシュアップ盤「グレイアルバム」へのあてつけなのかはわからないが、とにかく怖いアルバムだ。

ビートルズを最も愛した男」が、過剰な自己愛と偏執によって作り上げた究極のミックスCDを聞け。そしてタイトル「LOVE」に込められた思い入れの深さに戦慄するといい。
もうひとつの「アビー・ロード」B面。
そして悪夢の「The End」。