「マノン・レスコー」、僕らが悪女を愛する理由
- 作者: アベプレヴォ,Abb´e Pr´evost,河盛好蔵
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1957/06
- メディア: 文庫
- クリック: 9回
- この商品を含むブログ (23件) を見る
それにしても「マノン・レスコー」は本当に面白いロマンスノヴェルで、マノンのキャラクターは200年前とは思えない瑞々しさと強かさだ。今もって説得力があるし、魅力的。パンクなんだよね凄く。昨今の日本におけるマザコン恋愛小説など足元にも及ばない。愚かな男子にとって、魅力的な女性と言うものは常にそうすることを熱望しながらも、決して征服することは出来ない謂わばファンタジーのようなものだ。勿論偶像だから実際はそうならない。通常は男も女も各々が惚れた異性に愛想を振りまき、媚を売りまくる者だし、どちらかが何となく情に絆されて関係を持つ打算と予定調和の上に成り立つのがリアルな恋愛というものなのかもしれない。お互いが望むときにお互いが望むようなコトバが出るから、恋愛というというものは上手く行くのであって、そういった相乗的な感情操作に嫌悪感を持ってしまう僕のような人間は日常的な恋愛に向いていないのだと思う。上海で僕が恋に落ちてしまった映画女優ファン・ビンビンは物凄く性格が悪いらしいが、その話を聞いて、僕はとても昂揚したし、ますます彼女は美しいと感じるようになった。そんな話を後輩の女の子(めっちゃ美人な中国人女性!)にすると、不思議がられて「じゃ、優しい女の子はダメなんですかー?」と困り顔で言ったりするから、そんなことはないんだよと、一生懸命説明しようと試みたが無理だった。別に性格の悪い女の人に弄ばれたいのでは勿論なくて、むしろこのような女性に対する美意識は、僕のサディズムを刺激するものだったりするのだが、それを口頭で説明するのはとても難しい。マノンにしてもカルメンにしても実際はどうしようもなく我が儘で唾棄すべき尻軽女だが、それでも外面上の美しさだけでは到底引き出すことの出来ない精神的美点の発露を以って主人公または読者の心を簡単にさらっていく。そして成す術もなく運命に弄ばれるという主人公は全く以って滑稽で、ある意味では喜劇的だ。本当に身を焦がす恋というものは、自分ではどうしようもならないそれこそ宿命のようなもので、だからこそ魅力的だし、止められないものだったりするのだ。愚かでしょう。そういうものですよ僕らは。愛する者ってピエロだよねー。
*1:ここに「こころ」を入れてくるのがなんか凄いよね。