Devil's Own

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「恐怖奇形人間」―愛すべきグランギニョールと無限の想像力

なんかついに僕の愛機iPodがぶっ壊れたっぽい。。どうしようお金ないんですけど。
一応修理持っていこうかなぁ。。

さてさて昨日前ブログでも言及していた通り、カルト映画の傑作「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」を観て来た。

渋谷のシネマヴェーラで「妄執 異形の人々」と題された昭和の怪奇やポルノ、特撮を中心としたカルト映画上映企画で、今日が最終日だったのだが、本作を始め、本多猪四郎監督の幻の特撮映画「獣人雪男」、三島由紀夫が脚色を手がけた「黒蜥蜴」、先日亡くなった丹波哲郎の「大霊界」などなど。ラインナップはこちらで確認していただきたいのだが、諸事情でソフト化されていないものも多いので、早めに見つけられなかったことを後悔しまくりだ。
今日は授業終わって渋谷に直行し、「女獄門帖 引き裂かれた尼僧」と「恐怖奇形人間」を見てきたのだが、いやいや面白い。
劇場はかなりの混雑で「尼僧」は立ち見だったのだが、破格の素晴らしさだった。8時台時代劇とロマンポルノとB級スプラッタホラーとを掛け合わせた最強にクレイジーなアマルガムムーヴィー。よくよく考えてみればストーリーは破綻しまくりだし、勢いまかせのカメラワークに悪酔い必至だが、正直そんなことはどうでもよくなるほどの怒涛のストーリー展開だ。久々に狂気じみた映画を見た。正直これ一本でもお腹一杯なくらいだったが、ようやく本命「恐怖奇形人間
YouTubeで見られるトレイラーがこちら。

もうこの時点でNGワードが連発されているが、内容は思ったより「怪奇」ではなかった。「パノラマ島奇談」をベースに「孤島の鬼」「人間椅子」「屋根裏の散歩者」などのエッセンスが随所に散りばめられた、まさに「江戸川乱歩全集」といった内容。
奇形人間の集めたユートピア建設の執念に取りつかれる菰田丈五郎=土方巽の怪演の素晴らしさは筆舌尽くしがたいが、これもストーリーはかなり不条理で破天荒極まりない。奇形人間コレクションはまぁタイトルなのでいいとして、身体結合双生児だとか、近親相姦だとか、女装して人を殺す異常性愛だとか、椅子の中に入って婦人の身体を撫で回す男だとか変態的トピックスが盛りだくさん。
そして明智小五郎は唐突に現れ、唐突に推理を展開。銃口を向ける犯人に「弾は抜いておきましたよ」とお決まりの台詞に会場は爆笑。
そして最後には近親相姦の罪を犯した兄妹が人間花火でどっかーーーんと心中。花火と共に、悲劇的な恋人達の脚や胴体や繋がれた手が盛大に四散し、そして二人の生首が「おかーーーさーーーん」叫んで「終」って下らないにもほどがある。
タイトルがこれなんで、ソフト化はされないだろうが、こんな大傑作が一般の日の目を見ないまま埋もれていくのは本当に勿体無い。客席は始終爆笑だったし、最後には拍手喝采。
僕は、映画館に行ってもみんなが本編の間中黙り込んでるのが常々気持ち悪いなと思っていたので、こんなふうに観客のレスポンスがダイレクトに伝わるのも素晴らしいなと思った。
古き良き時代の余裕から来るユーモアセンス、アングラ色全開のシュールな世界観に相当な衝撃を受けた一日であった。
監督の石川輝男。つげ義春の原作の映画化「ねじ式」の人だった。

ねじ式 [DVD]

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この映画も相当不条理で、僕のフェイバリットだったので、なるほど繋がりましたという感じ。
あと土ワイで放映された江戸川乱歩原作シリーズの「天国と地獄の美女(パノラマ島奇談)」を見てみようと決心。

2時間サスペンスすらこれくらいの過激さを誇っていたんだから、いい時代である。ブラウン管からいくらグランギニョールを消し去ったとしても、人間の想像力は消せない。そして結局現実世界のほうがよっぽど怖いことになっちゃってる。