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ウルトラマンレオ考2―矢島信男のテクニックが冴える第11話「泥まみれ男ひとり」収録、意外とレオらしくないDVD第3巻

DVDウルトラマンレオ Vol.3

DVDウルトラマンレオ Vol.3

 先日購入して繰り返し見ているが、本当に面白い。第2期ウルトラシリーズに共通して言えることなのだが、突出したエピソードというのは一時期に固まっていることが多く、「帰ってきたウルトラマン」における11月の傑作群を筆頭に、Aだと初期8作品及び真船監督によるヤプール決闘編、タロウは第2期の中で唯一一貫したトーンを持った作品なので、一時期に限定するのはなかなか難しいがやはり初期1クール分が楽しい。あさかまゆみも出ているし。レオはというと味わい深いのは圧倒的に終盤における円盤生物編の1クール分だと思うが、所謂「レオらしさ」というものが最も顕著に現れているのは初期の1クールであり、「敗北→特訓→リベンジ」というスポ根ドラマの展開を意図的に踏襲した手法は、連続で見ているとワンパターンで飽きが来てしまうが、ひとつひとつのエピソードはなかなか見応えがあって、どれも熱くて最高だ。
 DVD発売時には1、2巻だけ購入して満足していたのだが、真夏竜氏が劇中で弾き語る珠玉の名曲「星空のバラード」が聞ける第10話と、矢島信男が演出した離れ業レオヌンチャクが見られる第11話がどうしても欲しくなったという次第。円盤生物編を中心としたレオのシリーズ全体の魅力については「メビウス」への客演のタイミングで書いたが、やっぱりいいよね「特訓編」。
 僕は特訓とか気合とかそういう体育会系メンタリティーは本当に苦手で、スポ根も本当に嫌いなのだけれど、「レオ」の「特訓編」はなぜかいつも清清しいカタルシスを感じる。個人的なベストエピソードはDVD第2巻収録の第7話「美しい男の意地」で、このエピソードには「男は外に出て戦わねばならぬ。男まで女の子と一緒になって家の中でまま事ばかりしていたら一体どうなる!!立て!!」というとんでもなく封建的な台詞が飛び出すので問題はあるのだけれど、最終決戦で怪獣ケンドロスが発射するブーメラン状の花びらを次々と叩き落すレオのカッコよさが、もう最高で、小学生の頃から何度見たかわからないほど好きだったりする。だからなんだという話だが。
 先ほど特訓を強調した初期の作品群は若干のパターン化が否めないという話をしたのだが、DVD3巻に収録された4エピソードは意外にもヴァラエティーに富んでいて驚いた。どれも一度は見たことがある作品であるにも関わらず新鮮な驚きを覚えるのは、やはり自分の中で「レオ=特訓」というイメージが頭にこびりついていたからだと思う。実際このDVDに収録されている中でレオ=おおとりゲンが特訓を行うのは2本だけだった。更に言えば、レオが敵を倒すのは第11話のみで、他の3本は宇宙に逃がしてやったり、小さくするなどなんらかの形での「和解」が見られる。所謂「レオらしい」作品は第11話「泥まみれ 男ひとり」だけである。特撮面に言及すればレオのアイデンティティーでもある暗雲立ち込めるホリゾントがなくなっていることに気がついた。よくよく見返すと曇り空のホリゾントは第6話を最後になくなっているのだが、あの禍々しい背景が、レオの暗澹としたムードを印象付けていたのでこれは少し意外な気がした。イメージと言うのは面白いなぁ。
 さて唯一のステレオタイプな「レオ」を表現した作品である第11話「泥まみれ 男ひとり」は、前述したレオヌンチャクが登場する作品なのだが、シナリオのストーリー展開がかなり粗雑で今時小学生でもこんな酷い話は書かないだろう。第一ケットル星人が地球に来た目的が不明だし。しかしながらケットル星人を倒さなくてはならないという差し迫った事実だけが強調されるために、異様な説得力があり、こういった強引さがレオの魅力でもある。ウルトラマンメビウスでのおおとりゲンが呟く「男はいつもひとりで戦うんだ。自分自身と戦うんだ」という台詞の元ネタがこのエピソードで登場するのも特筆すべき点だ。何より矢島信男による特撮の演出が最高にカッコいい。矢島監督が演出する特撮シーンでは、一方の顔のアップから対峙相手の股下から映し出した全体像にまで一気にカメラを引くショットや、至近距離で取っ組み合う両者の間の真下からの煽りのアングル、ローアングルなどタロウまでにはあまり見られなかった特徴的なシーンが多用されるのですぐに解るのだが、このエピソードは前述のものの他に逆モーションや新撮のトランポリンアクション*1など見所が多く、矢島の特撮監督してのノウハウと編集が最もスリリングな効果を生んだものだと思う。
 映像探してみるとありました。なぜか中国語でしかもぶつ切りに編集してあるのが実に残念だが。矢島監督によるスリリングな演出とスーツアクター二家本辰巳の華麗なアクションが楽しめると思う。

 あとこの主題歌がたまらなく好きだ。実はこの主題歌が用いられるのは第13話までなのだが。
 嗚呼、特撮が撮りたい。でも納得できるのができそうにないからなぁ。
 特撮ではないが、今日、新作に出演してもらう人たちに予定を聞いたのだが、どうやらクランクインは8月中旬になりそうだ。うーん。暇だから別のシナリオを練って先に撮ろうかと思う。

*1:ウルトラシリーズでトランポリンアクションが用いられるのは第2期以降だが、同じ宙返りなどは同じシーンの流用であることが多かった。