Devil's Own

cinema, music, book, trash and so on...

2009-01-01から1年間の記事一覧

『精神』

ナレーションやテロップなど言葉による「脚注」を廃した想田和弘の観察映画第2作。前作『選挙』は、半ばスケープゴートされる形で市議会選挙に立候補することになった平凡な切手コイン商が、次第に疲弊し人間性を失っていくさまを容赦なく映し出した、ユー…

『スター・トレック』

評判どおりの傑作だった。いつしか「輝かしい未来」を描きづらくなったSF映画*1の文脈を鮮やかに更新したといえるだろう。だいたい宇宙も未来も、いつからそんなに暗鬱なものになってしまったのだろうか。僕自身、ニヒリスティックな未来観を『ウルトラセ…

「私はまわりを見渡したが、神は見当たらなかった」

「6君は休日とかは何してるの?」 「休日ですか・・・映画観たり、本読んだりしてます。」 「えー、外とか出ないんだ」 「出ますよ。映画館とか本屋とか」 「スポーツとかやんないの?」 「やらないんですよね」 「パチンコとか麻雀とかもやんないんだよね」 …

『レイチェルの結婚』

傑作だとおもった。興奮した勢いで、お世話になっている映画批評家の先生にメールしたのだが、「デミが傑作とか嘘でしょ(笑)」と一笑に付されてしまった。なるほど、いくら映画に明るくてもトーキング・ヘッズやニール・ヤングに興味がない人なんてたくさ…

『スラムドッグ$ミリオネア』

僕はインドに行ったことがないし、インドのこともよくわからないのだけれど*1この映画は、『ラスト・サムライ』がまったく日本でないのと同じくらいまったくインドではない、ということはわかる。これは決して作品を貶しているわけではない。ダニー・ボイル…

『チェイサー』

ナ・ホンジンという人の初監督作。主人公のジュンホ(キム・ユンソク)は元は警官だったが、現在はデリヘルの元締めにまで身を持ち崩している。店の子が次々バックれるのに頭を悩ませるジュンホだが、その女の子たちが失踪直前に取った客が同一人物であるこ…

『グラン・トリノ』

『グラン・トリノ』、初日に行ったんですが隣に座っていたおばさんが超咳き込んでいて案の定伝染されてしまいました。そのせいで今日予定していたアルジェントは来週に持ち越すことに。うえーん。 さて、『グラン・トリノ』。もう2回見たが、やはり最後には…

『ミルク』

ガス・ヴァン・サントの新作はゲイの市民権獲得に尽力した政治家ハーヴェイ・ミルクの伝記映画。暗いタナトスに取り憑かれたような近年の作品群とはいささか趣が異なり、生への祝福に満ち溢れている。70年代のゲイムーヴメントを、あくまで陽気でクールで刹…

雑記 

「ああ、あんなに尖がっていたダイシックスさんも就職してブログ書く余裕もないのね…」と思われるのはちょっと癪なのだけど、実際そうですよ。ほんとに。とりあえずみんな国民年金は払おうね!お願いします!(笑) ジャック・ドゥミ初期作品集DVD-BOX 先日…

『ウォッチメン』

原作も読んだことがないというのもあり、映画の情報量にただただ圧倒されるのみといった感じだ。重厚なキャラクターと複雑な物語は、ヒーロー映画というよりもヒーロー論映画と表現する方がしっくりくる。その一方でザック・スナイダー語り口は前作と変わら…

近況

引越したのだが、ネットが開通していないので携帯電話からの更新である。ちゃんとしたエントリーはしばらくおやすみやもしれない。そんなこんなで、前回あれほど息巻いたわりに「戦争と平和」もあまり読み進んでいない。今日バイトの帰りに『ワルキューレ』…

雑文鋭くなって

昨日からトルストイの「戦争と平和」を読み始めた。新潮文庫、工藤精一郎訳の全4冊である。工藤先生の訳は、ドストエフスキーの「未成年」、「罪と罰」でお世話になった。どちらもものすごく読みやすく、けっこうな分量ながら一週間足らずで読み終えたように…

「このアルバムは、タモリだ」

MY FINAL FANTASYアーティスト: 昆虫キッズ出版社/メーカー: tomoe発売日: 2009/03/14メディア: CD購入: 3人 クリック: 75回この商品を含むブログ (16件) を見る 狂気と無邪気がないまぜになった怪物アルバムがついに出た。アートワークもキュート。世界はど…

『おろち』−僕らはおろち

昨年見逃していた『おろち』がレンタルで出ていたので見てみた。そもそもが矛盾だらけのおろちのキャラクター設定も含めて映像化しづらい楳図の原作を低予算でうまくまとめあげた良作。スクリーンで見なかったことを激しく後悔している。 蜷川実花による豪華…

Primal Screamのヴィデオがアルジェント過ぎる件

新作の日本公開もようやく来月。本国では『4匹の蝿』の正規盤が出たりと、ここ最近うれしいニュースも多いダリオ・アルジェント。その関係で、最近知ったのだけど、プライマルのヴィデオ*1が、もはや本人よりもアルジェントっぽいという・・・。『サスペリア・…

『ヤッターマン』−終わらない夏休み

数年前に『ヤッターマン』*1が実写映画化すると聞いたときは、正直「なぜ、いまさら」と思った。だからといって、「じゃ、どのタイミングなら適当だったのだ」と問われると返答に窮する。よくよく考えてみれば、ヤッターマンとドロンボー一味の戦いは、僕ら…

備忘録

もう最近、スマパンとスウェードばっか聴いてます。スミスもいるしiTuneがSだけで事足りるぜ。イワン雷帝 [DVD]出版社/メーカー: IVC,Ltd.(VC)(D)発売日: 2009/03/19メディア: DVD購入: 3人 クリック: 6回この商品を含むブログ (7件) を見る ショック集団 […

『チェンジリング』−カメラはおろち

語りえぬものについては、沈黙しなければならないというウィトゲンシュタインの警句をまっとうするような形で、イーストウッドの映画については、いつも何も言えずにただひたすら沈黙に身を投じるしかないという気がしている。実際、考えてみるとこのブログ…

『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』

前作『ゾディアック』同様後半で停滞する印象もあるものの、床の軋みまでクリアに伝わる音響設計や登場人物の心情を掬い取るような的確なライティングなど、フィンチャーの職人気質が発揮された秀作だった。デヴィッド・フィンチャーが、このようなメロドラ…

『愛のむきだし』、あるいは90sシンドローム

力作だけれど傑作ではない、というのが正直な感想だ。今日の日本映画で、こんなに荒唐無稽で、エロもグロもユーモアもきっちりと押さえて、なおかつ多くの観客をエンターテインさせるポピュリズムを獲得する。このことがいかに困難なことかはわかっている。*…

独白(『アラビアのロレンス』『愛のむきだし』など)

いやー、スクリーンで見る『アラビアのロレンス』には本当に感動した。恐ろしく美しいアラビアの砂漠が35ミリフィルムのロングショットでビシビシ決まる。これだけで心臓バクバク。そして、ひとたびカメラがロレンス(ピーター・オトゥール)の顔に近寄れ…

喜劇役者ミッキー

買ってしまいました。ミッキーマウス/B&Wエピソード Vol.1 限定保存版 (初回限定) [DVD]出版社/メーカー: ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント発売日: 2008/12/17メディア: DVD購入: 2人 クリック: 11回この商品を含むブログ (7件) を見るミ…

『我が至上の愛 アストレとセラドン』

エリック・ロメールの新作エロ過ぎる。いくら旺盛とはいえ、即物的な若者の性欲だけでは絶対に到達しえないであろうねっとりとした官能が、この映画には充満している。恋愛の、セックスの、酸いも甘いも知り尽くしたロメール御大の濃厚なエロスを見ろ、と言…

ジャック・ドゥミの『ローラ』

『シェルブールの雨傘』及び『ロシュフォールの恋人たち』のリヴァイヴァル上映もいよいよ始まった。*1これに伴って都内では、『ローラ』、『天使の入江』、『ロバと王女』などのジャック・ドゥミ作品群もちらほらと上映されていて、そのためか「ジャック・…

『007/慰めの報酬』

不必要なカット割とクローズアップを多用した冒頭のカーチェイスシーンで、もう失敗だと感じた。ああいうのは単なる誤魔化しであり、臨場感とは言わない。マーク・フォースターはボンドのアクションを描くことを最初から最後まで投げ出していたと思う。見せ…

メモ書き

すみません個人的なメモです。『片腕マシンガール』も届いたことだし、なんか他に出ていないかなと思ってアマゾン地帯をうろうろしていていると、自分の大好きな映画が続々リリースされることがわかってちょっと吃驚。当然全て買うわけにはいかないので大半…

マシンガールが我が家にやってきた

片腕マシンガール【初回限定生産 】 [DVD2枚組 ]出版社/メーカー: NIKKATSU CORPORATION(NK)(D)発売日: 2009/01/23メディア: DVD購入: 4人 クリック: 216回この商品を含むブログ (78件) を見る やれやれ、ようやく届いた。今日は一日中家でやきもきしていた…

ジャン・マリ・マティアス・フィリップ・オーギュスト・ド・ヴィリエ・ド・リラダン

未来のイヴ (創元ライブラリ)作者: ヴィリエ・ド・リラダン,斎藤磯雄出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 1996/05/25メディア: 文庫購入: 11人 クリック: 202回この商品を含むブログ (56件) を見る 東京で生活するのはお金がかかるし、ご飯も自分で作らなく…

イマとココから遠くはなれて−昆虫キッズのセカンドアルバム『My Final Fantasy』について

夢見るオトナたちを誘うハーメルンの音楽隊、昆虫キッズがやってきた。 甘くてこわい異界へつづく11の扉を、いま、たたく。 やっぱり僕らは、音楽に連れて行ってほしいのだ。どこでもいい。イマとココを遠く離れたどこかへ連れて行ってほしい。胸躍る音楽…

明けましておめでとうございます

といっても、もう今年になって10日も経ってしまいましたね。元気です。相変わらず実家です。テストが来週にならないとないので、まだまだ東京には帰りません。とりあえず、エリック・ロメールの新作は長崎では放映されないようなので、その上映時期には戻る…