『裸心 ─なぜ彼女たちはAV女優という生き方を選んだのか?─』
- 作者: 黒羽幸宏
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2011/05/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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AV女優のインタビューは大半が能天気な下ネタトークかヘビーすぎる不幸話のどちらかで、私は常々不満におもっていた。誰もAV女優の気持ちなんて興味なくて、そこには決まった需要と供給しかない。質問と答えがすべて決まりきっている。正直この本にもあまり期待していなかったのだが、初めて「ふつうの女の子」としてのAV女優たちの考え方や性格が見てきて、すごく面白く読めた。もちろん、結構どぎつい話もあったりするんだけどね。この本で何よりよかったのはインタビュアーもインタビュイーも、AV女優という職業をナチュラルに肯定しているところだ。男性消費者側のご都合主義とかAV女優側の自己正当化とかではなく、みんながAV女優の仕事を自分の中で肯定的に位置づけている。先日「アイドルすかんぴん」というノンフィクション番組が話題になっていたが「グラビアアイドルからAV女優に転身」=「転落」という図式は本当に古臭いし、失礼極まりないですよ。
この本に取り上げられている8人のうち、私が好きなのは大塚咲とかすみ果穂なのだが、特にかすみ果穂のインタビューはとてもいじらしくて泣いてしまった。入江悠とかが映画化すべき。思春期のかすみ果穂はとにかく徹底的に空っぽなんですよ。みんなと同じでいることが一番大事。かっこいい彼氏(私の読む限り最低のクズ野郎だが)がいたが、かすみは自分のルックスや性格、何よりもセックスに自信がないので彼氏を喜ばせようと必死でがんばる。それがセックスへの過剰な好奇心につながって、ほとんど流されるようにAV女優になってしまう。このあたりの展開にはさすがに戦慄する。世の中にはこんな風に自分の人生を決めてしまう人間がどのくらいいるんだろうか。面白いのは、かすみがAVの仕事を通してコンプレックスを克服し他人に左右されない自己を獲得していくところだ。その後、元彼にひどい中傷を受けたり家族に泣いて説得されたりするが、かすみはあくまでAV女優の仕事にしがみつく。とても気高く感動的なエピソードで、私はますますかすみ果穂さんがうつくしい女性だとおもうようになった。かすみ果穂さいこう、けっこんしてー。
基本的にこの本のインタビューは居酒屋などで酒を飲みながらという形式で行われていて、インタビュアーの黒羽幸宏もかなり軟派でへらへらしてる感があるのだが、切り口はいずれも鋭い。非常に考え抜いて構成されているとおもう。私も職業柄不慣れな取材をしていますが、インタビューからその人の本質をつかみとって記事を書くのってとても難しいんですよね。こういうアプローチもあるのかと素直に勉強になりました…とか最後に真面目っぽいことを書いて結ぶことにする。メガネをクイっとあげています。